やつがたけ
 八ヶ岳
登山日: 2011年2月19日(土)   標高:2899m(赤岳)
    標高差 : 美濃戸口から約1410m


 2月19日(土)    美濃戸口 5:30 → 美濃戸 6:35 → 行者小屋 8:50(〜9:20)
   赤岳 11:10(〜12:00) → 行者小屋 14:20(〜50)
   美濃戸 16:05 → 美濃戸口 17:00

 

 本日は赤岳に登ります。赤岳は一昨年の秋に登っていますが、冬の赤岳に登ってみたいということでいつかは登りたいと考えていました。先週痛めた右足首のこともあって、当初は八ヶ岳の別の山も考えていましたが、天候が良かったのでこの際チャレンジすることにしたのでした。

 最近は暖かい日が続いていて、自宅を出発したのは午前2時でしたが気温は10℃ありました。しかし、登山口となる美濃戸口は−11℃で、標高を考慮してもやはりこのあたりの寒さは半端ではないなと思いました。ただし、予報では昼間にはそれなりに気温が上がるはずでした。なお、美濃戸口までの道路は、駐車場手前数キロから凍結箇所がありますので、要チェーンまたはスタッドレスでしょう。帰路にはかなり溶けていましたので、数日でもかなり状況は変わりそうです。

【登山口(下山時)】 
  
【林道歩き(下山時)】
 駐車場は美濃戸口にある駐車場を利用しました。1日500円になりますが、明け方は係員の方がいなかったので戻ってきてから支払いました。

 駐車場付近の登山口からまずは美濃戸へ向けて出発します。前回は美濃戸まで車で入りましたが、この時期は4駈スタッドレス(+チェーン)でないとまず入れないでしょう。ちなみに、先日の雨で路面状況が悪化したということで、この日の朝は通行止めになっていました。(帰路には解除されていました。)

 あまり早い時間に出発する予定はなかったのですが、しばらくは林道歩きだったことと、本日は最近の山行と比較すると長丁場になるので、夜明け前から歩き始めることにしました。

【ショートカットの分岐(下山時)】 

【車のない赤岳山荘駐車場】 

【美濃戸山荘】 
 林道はやはりがちがちに凍っている箇所が多かったです。ただし、脇には雪も残っていたので、それほど歩くのには支障がありませんでした。道中ショートカットもあったようですが、登りでは暗かったこともあって全て見落としていたようです。途中ショートカットだと思って変な場所に入って時間をロスしてしまいましたが、1時間程で美濃戸に到着です。通行止めになっているだけあって、この付近には山荘関係者の車しかなく本当に静かな朝でした。

 美濃戸からは、南沢の道に入って行きます。ここからは、前回登った時と同じルートに入って行くことになります。とはいえ、季節が違いますので全然別世界になりました。
 
【北沢南沢分岐】 
 
【雪の多い登山道】
 樹林帯の道を歩いて行きますが、雪はしっかり積もっています。ただし、トレースがついているだけでなく、登山道がよく踏み固められているため、ラッセルすることもなく歩きやすくなっていました。

 樹林帯を一旦抜けたあたりで日が昇ってきます。一面の雪景色は見事で、通りかかった人が思い思いに写真を撮っていました。やがて分岐があってどちらに行くか迷いましたが、右手の道を歩いて行くとやがて行者小屋に到着しました。小屋はかなり埋まっていましたね。ここではテント泊をしていた方もいて、赤岳登頂のために準備をしていたようでした。

【樹林帯の合間から】  
 
【日の当たり始めた樹林帯】 

【雪に埋まった行者小屋】 
 なお、行者小屋からは、横岳から赤岳、阿弥陀岳までが見事な姿をさらしていました。光が当たってくるとなお素晴らしいのでしょう。実はこの時、かなり冷え込んでいて足が少し痺れるような状況でした。歩き始めたらすぐに戻ったものの、八ヶ岳の寒さを考えると厳しかったのかもしれません。準備は相変わらずもたつきましたが、ピッケルに持ち替えて、アイゼンを装着したら出発です。

 文三郎尾根コースは中岳の方に向けてきれいにトレースができていますので、そちらに向かって歩いて行きます。最初は、なだらかな樹林帯を歩いて行きますが、それを抜けると徐々に急な登りになってきます。  

【赤岳〜中岳〜阿弥陀岳 中岳に向けてトレースが】 

【徐々に急な登りに】 
 高度を上げるにつれて右手には中岳と阿弥陀岳、左手前には横岳と硫黄岳の姿が迫ってきます。このあたりでは何度も足を止めて写真を撮ってしまいました。急斜面ではとまれませんので、なかなかここぞという場面で撮ることはできませんでしたが、山頂での景色が楽しみになってくるような展望でした。

 尾根の積雪量は結構多かったらしく、ほとんど鎖が埋まっている場所もありました。とはいえ、雪はよく締まっていましたので、ほどよくアイゼンを効かせて登って行きます。

【赤岳と文三郎尾根分岐への登り】    

【中岳と阿弥陀岳】    

【硫黄岳と横岳】    
 
【文三郎尾根分岐】
 やがて風が徐々に強くなり文三郎尾根分岐に到着です。やはりここからの阿弥陀岳は見事です。登る途中はほぼ同じ高さに見えた中岳と阿弥陀岳ですが、このあたりまで来ると阿弥陀岳の存在感が際立ってきます。

 この分岐からが本格的な登りとなります。最初は九十九折れに登って行き、やがて岩場に入って行きます。この岩場に入った直後のトラバースは、鎖が埋まっているため幅の狭いところを慎重に進んで行きます。岩を乗り越すところが少し神経を使うでしょうか。この後の急登を登りきると、権現岳からの縦走ルートと合流します。
 
【阿弥陀岳】  

【権現岳と南アルプス】   

【文三郎尾根分岐からの道】   
 
【急登になり岩場へ】  

【埋まった鎖の下をトラバース】   
 
【慎重に乗り越えた岩場】 
 
【その後も急登が続く】 

【縦走ルート合流点】   
 合流した後も岩場の登りが待ち受けていますが、これを登りきると赤岳山頂に到着です。それなりのスピードで登っていたつもりでしたが、やはり結構な時間をかけて登っていたようです。

 赤岳山頂からは見事な景色が広がっています。風も時々強風が吹く程度で、赤岳山頂にしてはかなり穏やかだったのではないでしょうか。時々舞い上がった雪にたたきつけられるので、あまりのんびり写真をという状況ではありませんでしたが、時がたつのを忘れて写真を撮っていました。普段はほとんど山頂にいられないほどの状況のようですので、かなり恵まれた状況だったのでしょう。
 
【赤岳山頂】  
 
【頂上小屋と山頂】 
 
【阿弥陀岳と奥にアルプスの山々】  
 
【山頂からの富士山】  
 
【穂高連峰〜槍ヶ岳】  

【甲斐駒ケ岳〜仙丈ケ岳】  
 
【権現岳と南アルプス】  

【右から横岳〜硫黄岳〜天狗岳 左奥には蓼科山】   

【赤岳展望荘への下り】   

【赤岳展望荘】  
 山頂でのんびりした後は下山開始です。当初は文三郎尾根をそのまま戻る予定でしたが、山頂で地蔵尾根と難度は同程度、または人によって感覚が違うという話を聞き、地蔵尾根から下ることにしました。これが本日最大の分岐点だったと言えるでしょう。

 まずは、赤岳展望荘へ向けて急斜面を下って行きます。このあたりは風が凄まじく顔に雪が当たって本当に痛かったです。このあたりは装備不足を痛感することになります。ただし、足場は風で飛ばされて雪が少なく、一部やや深いところはあっても全体的には歩きやすい道になっていました。 

【赤岳〜中岳〜阿弥陀岳】   

【赤岳】   

【中岳〜阿弥陀岳】   

【地蔵尾根分岐】  
 赤岳展望荘まで下ってさらに進んで行くとやがて地蔵尾根分岐に到着です。この稜線上は雪が飛ばされているせいか本当に雪が少ないですね。地蔵尾根からの見事な赤岳と阿弥陀岳をカメラに収めたら下り始めます。

 ほとんど鎖の埋まった急な斜面を下って行きます。このあたりは急ではあっても、ホールドする場所がきちんとありましたので、問題なく下って行くことができました。問題はここから先で、トレースをそのまま追って行ったのですが、上から見るとほとんど垂直と思えるような場所がありました。
 

【岩場の下り】   
 
【下りを眺める 本来はどこかで左に見える尾根に乗る?】  
  うまく下れた場所もありましたが、下れなかった場所では足からそのまま滑落してしまいました。特に最初の滑落は、急斜面で上にピッケルを残し、アイゼンは外れるというどうしようもない状況になりましたが、なんとか立て直して進むといった感じでした。その後も何度か壁のような場所を過ぎた際に1回滑落して、1回はそのまま足から落ちました。幸いだったのは、雪の上に落ちただけなので怪我はしなかったことでしょうね。

 ただ、踏ん張りすぎて左膝が痛くなってきたのが大変でした。もう少しで樹林帯だと思っては裏切られ、何度も急なところを下ってなんとか樹林帯に入ります。

【1回目滑落の岩場】  

【2回目滑落の岩場】 
 
【なだらかな道だがラッセルは続く】  
 ようやくなだらかな場所になりましたが、今度はラッセルになります。とはいえ膝程度でしたので、体力が万端であればそれほどのものではないでしょう。ただ、この時には左膝が限界にきていたようで、足を抜くたびに痛みが走りました。

 ようやく登山道に合流です。やはりというべきか看板などはありません。ここでは既に行者小屋が見えているのですが、少し行者小屋に向かって歩くと地蔵尾根分岐がありました。下る途中どこかでトラバースして尾根に乗るべきところを、そのまま沢筋を下ってしまったためにこのような道をたどることになったのでしょう。
 

【分岐から地蔵尾根を眺める 本道は右の樹林帯の中】   
 
【地蔵尾根分岐】  
 行者小屋付近では、この日宿泊予定の方のものと思われるテントが数多く張られていました。やはり冬でも晴れると多くの人が訪れる人気の場所ですね。ここで、足を休めると同時に再びピッケルからストックに切り替えました。ただし、登山を始めたころよく痛めていたのでわかっていましたが、膝はあまり回復しませんでした。

 行者小屋からは緩やかな下りになりますので、アイゼンを効かせた快適な下りになる予定でしたが、このような状況ですので、左膝をかばいながらの歩きとなります。距離はそれなりにあるとしても、本当に長い長い道のりでした。美濃戸手前では左足を少し曲げただけでも痛みが走りました。
 
【行者小屋より再び 赤岳〜中岳〜阿弥陀岳】 

【青空のもと樹林帯を振り返って】   
 
【なんとか日没前に美濃戸口へ】  
 ようやく美濃戸に到着しましたが、正直この時はまだ1時間も歩くのかという感じでした。アイゼンは外していたのですが、朝は凍りついていた林道がかなり溶けて歩きやすくなっていたのは助かりました。なお、朝は通行止めになっていた美濃戸への道は帰りには解除されていました。ただし、遅い時間に解除されたのか、美濃戸に入っていた車は10台くらいしかなかったと思います。

 林道はそれでも登山道程の高低差はないので、左膝をほとんど曲げずに歩けたという点では思ったより歩けたと思います。日も暮れてきて、5時になった頃ようやく美濃戸口まで戻ってくることができました。
 夜明け前から歩き始めて、日没前にようやく登山口と結局まる1日歩くことになりました。コースタイムにすると、ほぼ1.5倍の時間をかけて歩いたことになります。本当に反省することしきりの1日となりましたが、それでも冷静に対応できたのは早朝から歩いたために時間的に余裕があったことでしょう。登ることができたことについては素直には喜べませんが、素晴らしい展望に恵まれたこと、これは本当に良かったと思います。いろいろな意味で忘れられない1日となりました。


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