おいづるがたけ
 笈ヶ岳
登山日: 2012年5月13日(日)   標高:1841m(笈ヶ岳)
    標高差:中宮温泉ビジターセンターから約1250m


 5月13日(日)    中宮温泉 4:20 → 野猿広場 4:50 → 冬瓜平 7:30
   笈ヶ岳 9:30(〜10:40) → 冬瓜平 12:10 → 中宮温泉 14:45

 

 本日は笈ヶ岳に登ります。今年前半の、残雪期登山の天王山と言えるでしょう。実はGWに登れなかった時点で今年の登頂は諦めていたのですが、GW後もあまり気温が上がらずむしろ上部では雪が降ったと思えるような寒気が入っており、この週末にはその寒気が抜けて快晴になることから登ることにしたのでした。通常は雪が多すぎることを心配するのですが、笈ヶ岳については、雪が少ないと藪漕ぎの必要な箇所が増えてしまうので、むしろ少なくなり過ぎていることを心配しました。例年の状況と比較してみると、この週末までならなんとかなるだろうと思いつつも、やはりこの心配は最後までありました。
【中宮温泉ビジターセンター(前日)】
 
【センター駐車場(前日)】
 土曜日はほとんどハイキング程度の山登りで、移動することを主としたので、日帰り温泉に浸かった後でもまだ明るい時間帯に現地入りすることができました。目的地は白山スーパー林道の無料供用区間にある中宮温泉ビジターセンターです。この無料供用区間は、GW直前にならないと通行できないため、ほとんどの登山者がGWに集中することになります。ただ、GWの混雑を避けるのと、もう少し雪の残った時期に登るために、その前に登っている方も結構いるようです。

 現地に入った日は、平野部では既に晴れ渡っていたのですが、現地付近はどんよりとした雲に覆われていました。寒気の名残か肌寒く、漠然とした不安を抱えながらの一晩となりました。
 
【登山口(前日)】

【よく整備された道(前日)】
 
【トンネルをくぐる(下山時)】
 車中泊組は数台程度で、GWが終わると静かになるものだと思ったのですが、夜明け前から次々と車が入って来ました。この日はあまり早い時間に出発するとルートが見えなくて困ると思い、4時半出発の予定でいたのですが、その頃には20台近くの車がとまっており、結構出発していた方もいました。

 車が増えてざわざわして来たこともあり、準備ができたらすぐに出発します。前日確認しておいた登山口からの出発ですが、次々と出発している方やグループがいたので、確認してなくても問題なかったのでしょう。最初は、よく整備された遊歩道を歩いて行きます。基本的には右手の川沿いの道を歩いて行けば問題ないでしょう。

【柵を越えて進む(下山時)】

【雪渓を振り返る(下山時)】

【野猿広場看板】
 途中聞いていたトンネルがありましたが、元々ヘッドライトを点けていますので、問題なく進んで行きます。さらに進むと立ち入り禁止の柵がありますが、これを越えて行きます。しばらく進むと大雪渓があるのですが、どこを渡るのかわからずに少し時間を費やしてしまいました。結論としては、登山道からそのまま突っ切ってしまえば良かったのですが、まだ遠方が見えない時間でわかりませんでした。その後、またトンネルをくぐると、レポートで何度も見た野猿広場の看板がありました。

 ここには休憩舎があり、その前を川が流れています。この川の渡渉が1つのポイントでしたが、登りは難なく渡ることができました。雪解け水が増水する下山時が問題なのですが、下りであればここを過ぎればそれほどの距離はないので、とにかく登りで濡れないことというのが自分にとっての課題でした。 

【渡渉地点】

【ジライ谷取付】

【木の根の急登のトラロープ】
 川を渡渉すると、いよいよジライ谷に取り付きます。最初から急登の連続で、ややぬかるんだ道の急登は歩きにくかったですが、その後は、木の根やトラロープにつかまりながら登る箇所もありますが、思っていたよりも整備された道でした。

 途中岩場もあって、ストックをしまおうか悩ましいところでしたが、三点支持が必要な程の場所はなかったので、ストックを目一杯利用して、体力や膝を温存して登って行きました。下りもハードになることは見えていたので、登りでいかに体力を消耗せずに行けるかが鍵でした。結果としては暑さにやられてばてばてだったのですが、それでも最後まで粘れたのは、登りでの温存が効いたのではないでしょうか。

【岩場を進む】

【正面の樹林越しに大岩が】

【雪の残る箇所も】
 やがて、正面に大岩が見えて来ます。残念ながらこの岩が見えても先は長いというレポを見ていたので、まだ登りが続くことはわかっていましたが、1つの目安にはなります。その後、1箇所雪の残った箇所もありましたが、その後はかなり登るまで雪は出て来ませんでした。

 急登をなんとか登って行くと少し見晴らしのいい場所に出ます。ここからは冬瓜山やその右手にシリタカ山が見えていました。恐らくこのあたりが1271m地点だと思われます。このあたりから雪道だと思っていたのですが、まだしばらく夏道が続きます。 

【開けた場所より冬瓜山】

【藪の突き出た道】

【藪はうるさいが明瞭な道】
 登山道は脇から突き出る藪がうるさいのですが、道そのものは明瞭で、少しかき分ければ進める程度の藪でした。思ったよりも上まで夏道がつながっていたのは意外でした。ただ、ここが通れないようではとても登れないわけですが。

 その後はややアップダウンがありますが、着実に標高を稼いで行きます。つい最近まで雪が残っていたと思しき場所を通って行くとやがて雪が出て来ます。このやや急な雪道を登ったところで振り返るとあまりの白山の素晴らしさに驚いてしまいました。この後もずっと晴れている保証もないので、休憩を兼ねて写真を撮りました。 

【徐々に雪道に】

【さらに高度を稼いで】

【振り返ると立派な白山が】

【短い距離の藪漕ぎ】
 後は雪道だと思ったのですが、やがて藪に赤テープが付いていますので、藪漕ぎをしました。回り込めないかと思ったのですが、意外と切れ目はないので藪を抜けて行きます。藪漕ぎと言っても多くの方が通っているので、それほど大変ではありませんでした。

 藪を抜けたところで、冬瓜山に向かうか冬瓜平に向かうか迷いました。一応往復とも冬瓜平を通る予定だったのですが、踏み跡がなければ登りは冬瓜山を越えてもいいかなと思っていたためです。結局踏み跡はなかったものの冬瓜平に下ることにしました。間違ったところを下ったようで、下り降りるというよりは下り落ちてしまいましたが、行きは笈ヶ岳方面に向かえばいいので、そんなに心配することはないでしょう。 

【なだらかな樹林帯へ】

【右手に冬瓜山を眺めながら】

【冬瓜平】

【冬瓜平からの笈ヶ岳(正面左側)】

【トラバース道】
 冬瓜平を適当なルートを取りながら歩いて行きます。右手には冬瓜山が見えていて、鋭い稜線を見せています。今回往復を冬瓜平に取ったのは、冬瓜山のナイフエッジを避けるためでした。ただし、この時期には雪もなくなっており、そこまでは危険ではないと思ったので、場合によっては通っても良いかなとは思っていました。

 冬瓜平を進んで行くと、徐々に正面に笈ヶ岳が迫って来ます。樹林帯を抜けるとすっきりとした笈ヶ岳を拝むことができました。既に山頂の雪は溶けてしまっているようです。冬瓜山を抜けるとトラバース道に入って行きます。 

【このまま登ればシリタカ山直後の分岐】

【トレースは明瞭な誤ルート】

【シリタカ山から下った鞍部】
 前日がかなり冷え込んだこともあって、雪が思っていたよりも締まっていたことから、トラバース道に入る前にアイゼンを装着しました。この日はアイゼンを装着するかしないかは難しいところでしたが、雪道歩きは慣れているとは言えないので、安全を期して装着することにしました。これによりトラバース道も安心して通ることができます。

 一気に下って行くトラバース道を進んで行くと、雪崩跡があってこれを乗り越えて行きます。ここを過ぎたあたりで登って行くと、シリタカ山から少し下ったあたりの本道だったのですが、下に踏み跡が見えたので、まだ分岐には早いように思えてもう少し進んでみることにしたのでした。トレースは明瞭でしたが、これが誤ったルートで、藪漕ぎをしたうえに、シリタカ山方面に急登を登り返すことになりました。登り返さずにトラバースして行けば本道に合流できますが、かなりの急斜面で踏み外したら一気に滑落して行きますので、安全に登り返しました。

【国境稜線への登り返し】

【藪の脇を登って最短ルートへ】

【肩付近より笈ヶ岳】

【振り返って右のシリタカ山と白山】

【白山】

【三方崩山〜白山の眺め】

【小笈ヶ岳への登り】
 登り返した後は、一旦本道に合流して鞍部に下って行きます。ここは結構な急斜面ですが、雪も緩んでいて快調に下ることができました。また、この付近は見晴らしもよく、相変わらず白山の展望が素晴らしかったです。

 鞍部からは国境稜線に向けて登り返して行きます。所々出ている藪は少し巻きながら進んで行きます。稜線手前に広範囲の藪があるのですが、これは、藪の手前を登って右手に回り込んで行きます。そうすることで藪漕ぎが最短になるようです。雪の付いたところはトレースを追っただけですが、藪漕ぎでは苦労しました。帰りには結構な数の人が通ったためかかなり楽になっていましたが。

【ようやく正面に笈ヶ岳山頂】

【山頂の雪は既になし】

【歩いて来た稜線を振り返る】

【頂上碑】
 藪を抜けると気持ちの良い稜線に出ます。この付近の雪はふかふかしていて、前日の雨が雪になっていたようでした。季節外れの新雪といったところでしょうか。

 新雪でやや深いところもありましたが、せいぜい膝まで程度でしたので問題なく進んで行きます。まずは、手前の小笈ヶ岳を越えます。するとようやく正面に笈ヶ岳が見えて来ます。最後雪のないやや藪っぽいところを抜けると、ようやく笈ヶ岳山頂に到着です。冬瓜平からの合流点や藪漕ぎで手こずりましたが、思っていたよりも順調に登ることができました。

【白山と頂上碑】

【穂高連峰】

【乗鞍岳】

【猿ヶ馬場山 後方に北アルプスの山々】

【白山】

【山頂付近をズーム】

【国境稜線を眺める】

【大笠山】

【剱岳と立山】

【国境稜線から白山の眺め】

【小笈ヶ岳の登り返し】
 天気に恵まれて素晴らしい景色が広がっていました。当初軽量化のためにデジイチを置いて行くことも考えていたのですが、この景色を見てはきっと後悔していたことでしょう。山頂では写真を撮る以前に、素晴らしい景色のために他の登山者の方との話も弾み、時がたつのも忘れてしまいました。自分よりも先に登っていた2人だけでなく、後から登って来た人も下山した頃、のんびりと景色を眺めながら写真を撮っていました。

 本当は時間が厳しくなることから山頂は30分程いれば十分で、ガスっている場合であれば、すぐにでも下山に取り掛かるつもりでしたが、結局1時間以上ものんびりしてしまいました。

【小笈ヶ岳から下ったあたりからの眺め】

【側面からの笈ヶ岳】

【雪崩れた跡】
 1時間以上いても惜しいと思われる景色を名残惜しみつつ下山開始です。下りも長丁場になりますので、あまり急がずにゆっくりと下って行きます。まずは、小笈ヶ岳を登り返して稜線を歩き、国境稜線分岐の藪を抜けます。下りでは、登りで人が通ってルートができていたので、藪漕ぎではなく藪くぐりという感じで、あまり労力を割かずに済みました。その後一旦鞍部に下って、シリタカ山へ登り返して行きます。このあたりでも、いくつかのパーティとすれ違いました。長丁場の山ですので、このあたりが登って来る人とすれ違った最後になりました。

 その後はシリタカ山へ登る途中にある分岐点から冬瓜平に下って行きます。今度はトレースがありますので、間違えることもありませんでした。

【再びトラバース路へ】

【冬瓜平】

【笈ヶ岳も見納め】

【藪っぽい夏道を通る】 
 一気に急斜面を下ってトラバースしながら進んで行きます。朝方と比べると雪が緩んでおり、歩きやすくなった面と歩きにくくなった面があるという感じでした。むしろ、前日が寒かったせいで涼しい中を歩けた朝の登りと違って、気温が上がってじりじりと照りつける太陽に体力を奪われて行きました。

 冬瓜平では、笈ヶ岳を見納めた後そのまま戻って行きます。時々休憩をとりながら進んで行きました。冬瓜山からのルートとの合流の際に、藪漕ぎを避けて回り込もうとしたために、方向を誤るというミスを犯してしまいました。何のために藪に目印のテープが付いているのかを考えるべきでした。遠回りし過ぎて結局は余計に労力を使ってしまったと思います。 

【鮮やかなツツジ】

【岩場を下る】

【急斜面の下り】
 合流して少し下ると藪っぽい夏道に再び戻って来ました。ここからは雪がないので、アイゼンを外して下って行きます。この日の笈ヶ岳は雪のあるところとないところがはっきりしていました。

 このあたりの道は、冬瓜平で追い付いた2人組の方と抜きつ抜かれつ下って行きました。お互い無理せず休憩を挟みながら下ったからでしょう。その後急斜面の下りになったので、この日初めてストックをしまってから再び下って行きます。疲れていた割にはそれなりのペースで下って来られたのではないでしょうか。結果としては登りが順調過ぎたのだと思います。 

【下山時も水量はそれほど増えず】

【渡渉地点を振り返る】
 ジライ谷の取り付きまで下ってくれば、後は最後の難所である渡渉です。ここまで戻ってくれば、川にひどい落ち方さえしなければという感じでしたが、水量があまり増えておらずあっさり渡渉することができました。ここは、場合によってはかなり増水するそうですので、本当に運が良かったのだと思います。

 渡渉後は遊歩道のような道を歩いて戻って来ます。ただ、整備されていないせいか、崩れたままになっている箇所もあるので、そこだけは要注意です。登りでは見えなくて苦労した雪渓も、明るくなってみるとまっすぐ突っ切ればいいということに気付いたのでした。この遊歩道では、お花も咲いていて、登山口付近では花を見に来た観光客の方も歩いていました。  

【場所によっては雪が残るスーパー林道】

【終わりかけのカタクリの花】

【ニリンソウ】
 下りも長丁場でしたがようやく登山口まで戻って来ることができました。かなり疲労はしていましたが、GW前半の暑さにやられた時に比べればまだ良かったと思います。

 今回は本当に登ることさえできれば御の字と思っていた登山でしたが、思わぬ好天に素晴らしい景色を見ることができて、思い出深い山行になったのではないかと思います。また、今回の登山は今シーズンの残雪期登山の締めくくりでもありました。笈ヶ岳というととにかく難関の山というイメージが突出してしまいますが、天気に恵まれれば展望の素晴らしい魅力的な山だということを実感させられたのでした。 

【ようやく登山口へ】
 


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