のぐちごろうだけ・たかまがはら・えぼしだけ
 野口五郎岳・高天原・烏帽子岳(1〜2日目)
  登山日: 2012年7月14日(土)〜7月17日(火) 
  標高:2924m(野口五郎岳) 2628m(烏帽子岳)   
  累積標高 約4400m(七倉山荘から野口五郎岳まで約1830m)


 7月14日(土)    高瀬ダム 6:30 → 烏帽子小屋 10:45(〜11:40)
   三ッ岳直下 12:40 → 野口五郎小屋 14:35
 
 7月15日(日)   野口五郎小屋 6:00 → 野口五郎岳 6:15 → 水晶小屋 8:30(〜9:30)
    雲ノ平山荘 12:20(〜13:10) → 高天原峠 14:40(〜55)
   高天原山荘 16:00
 
 7月16日(月)    高天原山荘 4:20 → 水晶池分岐 5:10 → 水晶小屋 7:50(〜8:20) 
   野口五郎岳 10:40(〜55) → 烏帽子小屋 13:40(〜55)
   烏帽子岳 14:40(〜50) → 烏帽子小屋 15:30
     
 7月17日(火)    烏帽子小屋 5:20 → 高瀬ダム 7:40 → 七倉山荘 8:50

 

 本日より海の日3連休&予備日1日を使って裏銀座を歩きます。縦走というよりは、未踏の野口五郎岳と烏帽子岳を絡めつつ奥地まで行ければというのが当初のプランでした。結局出発前に出した登山計画書では、初日は烏帽子岳&烏帽子小屋泊、2日目は野口五郎岳を経由して雲の平泊、3日目はがんばって湯俣温泉までという計画でした。これが提出時点で、今年竹村新道を歩いた人はいない、残雪が多くて無理ではないか、かなり体力的に厳しいという指摘を受けて既に計画が揺らいでいる状態でした。結果としては、厳しいルートなのは間違いないですが、実際歩いている人もいて、残雪で注意は必要ですが、通れないということはないようでした。初日に烏帽子岳を素通りした時点で、湯俣温泉に下るのをあっさりあきらめたわけですが、いつか訪れたいと思います。 
【七倉駐車場】
 
【ダム湖】
 裏銀座登山口へは、七倉まで駐車場に入り、そこからタクシーで高瀬ダムに向かいます。タクシーの始発は、海の日の前までは6時半ですが、海の日からお盆過ぎまでは5時半となります。せっかく早い始発になったのですが、現地到着がやや遅れて、タクシーに乗ったのは6時頃だったと思います。駐車場には20台ちょっとの車で、海の日の連休の割には閑散としたイメージでした。この後苦労することになるわけですが、やはり梅雨が明けていないのと、あまり天気が良くなさそうというのが要因だったようです。梅雨の明けた昨年の海の日はかなりの混雑だったとのことでした。
 料金はだいたい2000円程度で、乗り合わせればその分安くなります。自分は夫婦の方と乗り合わせて3分の1で済みました。

【正面のトンネルに向かって歩く】 

【トンネル前】 
 先に天気のことを書きましたが、予報では初日こそ雨だったものの、2日目以降は回復してくるはずでした。さすがに梅雨時ですので、4日目あたりではまた崩れてくるかもしれないと思ったのですが、2〜3日目は晴れるか、そうでなくてもそれほどひどい天気にならないと想定していたのでした。今回は、天気が悪化したとはいえ、雨以上にやはり風に苦しめられた感じでしょうか。
風も初日については、ある程度想定していたのですが、2日目以降は弱まると踏んでいました。山の予報の難しさと荒れた時の厳しさを身を以て体験することになります。

【長いトンネルですが電灯あり】 

【吊橋へ】 

【側面から見た吊橋】 

【吊橋を歩く】 
 タクシーは高瀬ダムを登った堰堤の上まで運んでくれます。ここから、左手にダム湖を眺めつつ奥にあるトンネルを目指します。このやや長いトンネルを抜けると吊橋があります。当初、この吊橋の脇を下ってあさっての方向に向かってしまうところでした。

 吊橋と言っても造りはしっかりしていますので、それほど揺れることもなく、高度感もそれほどではありませんので、あまり怖くはありませんでした。畑薙大吊橋の高度感が半端ないからかもしれませんが。この吊橋を渡るとキャンプ場があります。麓で夜を明かすにはいいかもしれませんが、実際のところは初日に烏帽子小屋までは何とか上がってしまう人がほとんどではないでしょうか。

【キャンプ場】  
 
【川を渡って登山口へ】  

【裏銀座登山口&水場あり】  
 河原に出て、川を渡って奥に進んで行くと山への取り付け地点があります。ここが登山口で、北アルプス裏銀座登山口の標識もありました。なお、自分は利用しませんでしたが、水場もありました。まだ、この時点ではそれほど歩いていませんので、そのまま登って行きます。

 やはりテント装備での登りはなかなか厳しいものがあります。特に、今回は事前の練習なしに今年初めてのテント装備となったのですからなおさらです。ただ、昨年結構担いでいたのと、日帰り登山でもあまり軽量化を図っていなかったせいか、思った程ひどくはありませんでした。ただ、重い装備だけが原因ではないと思いますが、結果的にはこの1日目の疲れ方がひどかったですから、やはり負担が大きかったのかもしれません。
 
【ヤマブキショウマ】
  
【ゴゼンタチバナ】
 
【現在地を示す数字 12まで】 
 ブナ立尾根は北アルプス三大急登の1つと言われているだけあって、一気に標高を稼いで行きます。最初の鉄板や木道の登るところは、滑るようだと嫌な場所でしたが、濡れていても滑るようなことはありませんでしたし、他の場所も特に危険なところはほとんどなかったように思えます。とにかく体力勝負の登りになりそうです。

 ちなみに、道中には数字を記した標識が一定間隔ごとに出て来ます。登りではきちんと見ていなかったので、一番下が10で、徐々に数字が小さくなって行くものだと思っていましたが、下山時に12まであることに気付きました。どちらにしてもいい目安、目標になるのではないでしょうか。
 
【樹林帯を歩く】 
 
【少し広々とした「6」の地点】
 
【シャクナゲ】
 さすがにこのくらいの標高ですと、花はそれほど見られませんが、樹林帯が続いて、山の奥深さは実感できるのではないかと思います。

 そのうちに雨が降って来て、徐々に強くなって来ます。小雨が降ったりやんだりは続いていたので、今回もすぐにやむかなと思ってそのままにしておいたのですが、それなりの強さになって来たので、まずはザックカバーとレインハットを装着しました。そして、結局雨脚が強まったのできちんと雨具を装着したのでした。この時点では、その後大半の時間で装着することになろうとは思ってもいませんでした。

【三角点】 

【タヌキ岩】 

【ややガスのたちこめる森の中】

【コイワカガミ】

【ミツバオウレン】

【ツツジ】

【前烏帽子岳のようです】
 そのうちタヌキ岩と呼ばれる場所に出ます。雨宿りをするのにうってつけそうでしたが、先客の方がいたのでそのまま進むことにしました。 

 登って行くと北側の開けた場所も出て来ますが、北方の縦走路上にある山々は雲に覆われてしまっているようでした。このような天気では仕方がないのかもしれません。また、烏帽子岳のような山も見えたように思えたのですが、これは前烏帽子岳で、ニセ烏帽子岳とも呼ばれているようで、烏帽子小屋付近ではこの山があるために烏帽子岳は見えないようです。烏帽子岳方面との分岐を経て烏帽子小屋に到着です。
 
【雲に覆われた北方の山々】

【烏帽子岳方面分岐】

【小屋前ベンチ】 
 
【コマクサ】

【イワギキョウ】

【アルプスの山々も雲の中】
 
【烏帽子小屋入口】
 烏帽子小屋に着いた頃には雨は再びやんでいましたが、やはりどんよりとした雲に覆われているのは相変わらずで、赤牛岳や薬師岳が見える烏帽子小屋の前も展望はありませんでした。また、この烏帽子小屋のベンチ前にはコマクサやイワギキョウの群生地があって目を楽しませてくれます。

 当初はこの後に烏帽子岳に登って、小屋でテント泊する予定でしたが、この日は天候に期待が持てないが、後日なら期待できるかもしれないということで、湯俣温泉へ下ることを諦めて、帰路に烏帽子岳に寄ることにしたのでした。
 
【小屋奥の雪渓】

【テント場】 

【ミヤマキンバイ】

【ミヤマキンポウゲ】

【チングルマ】

【アオノツガザクラ】

【振り返ってもまだ烏帽子岳は見えない】
 その烏帽子岳に登る予定だった時間を活用して、野口五郎小屋まで進むことにしました。2泊目を予定している雲ノ平には、できるだけ早い時間に入ることで、雲ノ平の景色を楽しみたいというのがありました。3泊目を烏帽子小屋にするのであれば、雲ノ平はかなり早い時間に出ざるを得ません。そうなると、2日目に早めの時間に入らないと明るい時間にはほとんどいないことになります。本当は余裕を持ってというのが一番ですが、なかなか現実はそうも行かないですね。

 烏帽子小屋の奥に進んで行くと、雪渓がありますので、これを越えて行きます。この後少し下ったところからテント場が続いています。同時にこのあたりはお花畑になっていて、黄色系の花が見事に咲き誇っていました。 

【ガスに覆われた稜線へ】

【振り返るとようやく烏帽子岳】

【三ッ岳手前の山へ向けての登り】

【キスミレ】

【コマクサの群落】

【イワウメ】
 テント場を抜けると本格的な稜線歩きになって来ます。ガスのかかった稜線に向かって徐々に高度を上げながら登って行くと、やがて振り返った先に烏帽子岳が見えて来ます。岩峰鋭い立派な山ですが、空がどんよりとしているせいか、周囲の山の間に溶け込んでしまっていて、いまいち存在感を発揮できていないように思えました。

 その後砂礫地を登って高度を稼いで行きます。このあたりは、スミレや、特にコマクサの群落があってなかなか素晴らしかったです。このあたりは、天気の回復した帰路で眺めた時もまた良かったです。 

【緩やかなアップダウンの続く稜線】

【ライチョウと御対面】

【かわいい雛】

【ミヤマダイコンソウ】
 緩やかなアップダウンの続く稜線を歩いていると、ライチョウしかも親子連れと会うことができました。昨年もそうだったのですが、初夏には本当によくライチョウに会います。結果としては、今回は3日目まで毎日会うことになりました。しかも、1日何回も見ることもあって、かなり遭遇率が高かったです。それも天気が悪かった影響なのでしょうか。

 その後三ッ岳をトラバースして進んで行きます。三ッ岳を越えた先は、トラバース道と尾根筋の道があり、この残雪の残る時期は尾根道を通るよう案内が出ています。実際尾根からトラバース道を眺めてみると、結構な斜度の雪渓に覆われている箇所がありました。この尾根筋に出るには急斜面を登らないといけないので、トラバース道を通っている人もいましたが、自分が見かけた人は結局引き返していました。

【烏帽子岳(左手前)を振り返る】

【針ノ木岳と蓮華岳】

【もう少しで見えそうな野口五郎岳】

【上部は雲に覆われたアルプスの稜線】
 その後も着実に進んで行きますが、このあたりでは、西側からの風が強烈で、西側に道が付いていたり、開けている場所ではよろけてしまう程の風が吹いていました。特に、雨の降っている時間があったのでザックカバーを付けていたのですが、きっちりザックに合わせて固定したつもりでも、間一髪で飛んで行ってしまうところでした。結局、雨もかなり弱まるかほとんどやんでしまったので、外して歩くことにしました。

 正面にあるはずの野口五郎岳ですが、完全にガスに覆われていた状態から、歩くにつれて少しずつ見えて来ました。

【緩やかに続く稜線】

【三ッ岳方面を振り返る】

【ようやく山頂の見えた野口五郎岳】

【もう少しで山頂が見えそうな水晶岳と赤牛岳】

【岩場を越えて】
 風に耐えながら進んで行くと、ようやく野口五郎岳の山頂までがすっきりと見えるようになりました。相変わらずの強い風のせいで踏ん張らされるために体力は消耗していましたが、登る予定の山が見えて良かったです。翌日が大荒れでしたので、本当にこの時見えていて良かったと思いました。

 その後も緩やかなアップダウンを繰り返しながら進んで行きます。ちょっとした岩場、岩のごろごろした道もありますが、概ね歩きやすい道で、風がなければ快適な稜線歩きとなっていたでしょう。お花畑もところどころにあって目を楽しませてくれました。

【チングルマのお花畑】

【ミネズオウ】

【鞍部に野口五郎小屋】
 野口五郎岳手前のピークを越えると鞍部が見えて来ます。ここに野口五郎小屋があります。この時は再び野口五郎岳山頂が雲に覆われそうでしたし、何よりこの風の中を山頂に向かって歩く気には到底なれなかったので、この日はそのまま野口五郎小屋までとすることにしました。

 野口五郎小屋は、こじんまりとした小屋で定員も多くはないのですが、位置的に中途半端だということであまり混まないとは聞いていました。ましてや、七倉駐車場の様子を見る限りではかなりすいているのかなと思っていました。

【歩いて来た稜線を振り返る】

【小屋入口】
 小屋は、自分と同様烏帽子小屋を素通りしたり、団体さんが結構入っていたこともあって、思ったよりは多かったです。ちょうど1人につき布団1枚なので問題はありませんでしたが。ただ、食堂には人が溢れているような状況でした。

 ここの食事はおいしいと聞いていたのですが、疲労があまりに激しかったようで、全然食欲が出ないような状況でした。無理に押し込んだ感じで、せっかくの食事がもったいなかったです。この食欲のなさでは、朝食は外して正解だったかなと思いました。食事前後は、同じく泊まりの方といろいろな話をして過ごしました。普段は小屋泊まりはしないのですが、こういった交流も小屋泊まりの醍醐味の1つかもしれません。その後、前日までの睡眠不足と疲労のせいか、横になったらすぐに寝ることができました。 
 

【激しい横風を受けながら進む】 
 2日目の朝を迎えます。基本的に山で泊まった場合には当然早出をしたいところで、小屋の朝食を取らないというのはそれだけ早く出たいという意図もあったのですが、夜半から強い風が吹き付けており、それに雨も加わって激しい風雨となっているようでした。結局様子見を兼ねてゆっくり準備をすることになりました。

 小屋でお話しした方は、結構この日に水晶岳鷲羽岳に登り帰って来るというプランを立てている方が多いようで、このまま引き返すか、この日に無理に登ってしまうかで悩んでいるようでした。また、赤牛岳という方もいて、どちらにしても稜線を進んで行かざるを得ません。自分も極端な話、目の前の野口五郎岳と烏帽子岳を登れば目的は達せられるために悩ましいところがありました。
 結局待っていてもきりがないということで、小屋の朝食もすっかり終わった6時に出発します。早朝から出た方もいたようですが、この時間あたりからみなさん動き始めたようです。結局、待ってみても回復する見込みがなかったというのがあるでしょう。自分は、3日目こそは晴れると信じて進むことにしました。このままでは終われないとでも思ったのか、今思えば結構前向きだったなと思いました。

 まずは野口五郎岳に登ります。激しい風雨で、この目の前の山に登るのにさえ、少し道を間違えるような状況でした。正確には間違ってはないのですが、やや遠回りをしてしまいました。

【野口五郎岳山頂】 

【頂上碑】 
 山頂は当然何も見えませんし、一段と風雨は強さを増して来ます。烏帽子岳同様帰路に寄ることにすればいいのですが、トラバース道がよくわからなかったので、わかりやすい山頂を経由する道を取ったという感じでしょうか。

 写真だけ撮ったら先に進みます。正直、風雨が強くてデジカメを濡れないようにすることすらあまりできなかった割にはよく撮れていたものだと思います。最終的には液晶に水が入って、画像をほとんど確認出来なくなっていくのですが、写真自体は撮れていたようです。激しい風雨が突き上げる中真砂岳分岐へ下って行きます。ザレた道でしたが、道がはっきり判別できる状態だったのには助かりました。

【激しい風雨に突き上げられながらの下り】 

【真砂岳分岐】 

【残雪との間を通る】
 この日はあちらこちらで強風に煽られましたが、その中でも最も強かったのがこの野口五郎岳からの下りだったでしょうか。やや斜め前から風を受けるので大変でしたが、下りでしたのでその点では助かりました。ザレた道を下って行き、トラバース気味の道を進んで行くと真砂岳分岐に到着です。残雪が多いという竹村新道方面ですが、当然全く見えません。

 その後は、水晶小屋方面にさらに下って行きますが、この後は小さなピークを越えたり巻いたりしながら緩やかなアップダウンが続きます。また、このへんでは所々ですが岩場も出て来ます。風の当たりがやや弱くなったのと、あまり岩が滑らなかったのでなんとか進んで行きます。

【ハクサンイチゲのお花畑の脇を通る】 

【徐々に現れる岩場】 

【再び登り返す稜線を眺めて】 
 その後、緩やかな下り坂を進んで行くと東沢乗越があります。強烈な風が吹いていた西側にピークがありますので、ここは風もなく穏やかでした。雨は降っていますがここで休憩を取りました。その間に、先を急ぐ方達が次々と通り過ぎて行きました。この雨で、靴の中も雨具の中もびしょ濡れなので、体が冷えるような長い休憩はできません。少し休ませる程度の休憩の後に先に進みます。

 ここから先は、狭い道を通るような岩場もあり、アップダウンもそれなりにあってなかなかハードでしたが、風がほとんどなかったという点においては、むしろ歩きやすかったかもしれません。最後、ザレた急な道を登ると水晶小屋に到着です。

【東沢乗越】

【水晶小屋の中で】

【ワリモ北分岐】
 水晶小屋には既に休憩している方もいましたが、その後も続々と休憩する方が入って来ます。おしるこを食べて体を温めつつ、雨が弱くなるのを待ってみましたが、正直着ているものが濡れたままでは体は冷えたままでしたし、雨が弱まる気配もありませんでした。むしろ、これ以上いても小屋にも迷惑をかけてしまいますし、きりがない部分もありますので、雲ノ平に向けて出発しました。なお、その際、小屋の方が雲ノ平方面の道の状況について聞いてくれたのには感謝です。

 小屋を出た直後は、再び風雨に曝され、さらに体が冷えてしまい体が震えてしまうほどでした。風雨に曝されることの恐ろしさを身をもって知りました。しかし、体を動かしているうちにようやく元の状態に戻って来ました。 
 まずはワリモ北分岐を目指します。このルートは、一昨年水晶岳、赤牛岳に登った際に往復しているのですが、とても同じ道を歩いているようには思えませんでした。道がしっかりしているのが救いですが、それでも、岩のごろごろした場所はややわかりにくかったです。やがてワリモ北分岐に到着です。

 ここで、鷲羽岳方面の道と分かれて下って行きます。ここからはザレた急斜面を下って行きますが、きれいに九十九折れの道がついていますので、比較的歩きやすいです。ここを下りきると岩苔乗越に到着です。ここで、雲ノ平に行くのか高天原に行くのか悩みました。水晶小屋にいた時からどちらに行くか悩んでいたのでした。

【雪渓を登る】 

【祖父岳山頂】 
 最終的には高天原に向かいましたので、ここで高天原に向かうのが正解だったのでしょうが、さすがに視界がない上に雪渓がかなり残っている中では、とても歩いたことのない道は取れませんでした。予定通り雲ノ平に向かいます。

 聞いていたとは言え、岩苔乗越を過ぎてすぐに雪渓になります。うっすらと山頂方向は見えていましたので、そちらを見失わないようにしつつルートを探します。ここは一昨年2往復していたので、地形的には何となく思い出す場所もあったせいか、あまり迷うこともなく登って行きます。そして祖父岳山頂に到着です。当然展望はありません。
 祖父岳は山頂が広いので下る場所を間違えないように慎重に探します。ただ、きちんと目印がありましたので、探すというほどのことはありませんでした。一昨年わかりにくかったこの岩場の下りですが、意外に問題なく下って行けました。しかし、雪渓で切れているところがあり、その先が全くわかりません。方角的には雪渓の切れ目あたりを歩けばと思ったのですが、ここだけはGPSを使ってルートを確認して下って行きました。

 やがて、木道が現れます。ただし、その後も雪で埋まっている箇所もあって、迷う場所はもうなかったものの歩きにくい道が続きます。立ち入り禁止になっているテント場へ下る道が現れます。 

【随所に残る雪渓】 

【ガスがなければ延々と広がる雲ノ平が】 

【雲ノ平らしい景色ですが花はハクサンイチゲを除くと少なめでした】 

【雲ノ平山荘】
 このあたりから見下ろすと、ガスの中とはいえ、雲ノ平の広がりを感じることができます。この後、巻き道を歩いて行きますが、歩きにくい箇所もあって、思ったよりも長く感じました。その後木道になり、後は順調にと思ったのですが、この後も木道全体が雪の中という場所もあり、いかに残雪が多いかを物語っていました。途中、テント場への分岐を見落とすくらいで、後で小屋の方に聞いたら、実際わかりにくくなっていたようです。

 このような状況ですので、雲ノ平でテントを張る気もあまり起きて来なくてとりあえず雲ノ平山荘を目指しました。途中、川を渡る木道が完全に折れていて、回り込むような場所もありました。雲ノ平山荘には本当にようやく到着という感じでした。

【高天原方面への道を眺める】 

【高天原分岐と右手に残る雪渓】 
 雲ノ平山荘で休憩をさせてもらいつつ、この後の予定を検討します。雪は残っていますが、テント場は使えるとのことでした。ただし、この時点でこの天候ですので、とてもこの日のうちに回復するとは思えませんでした。

 この時、休憩をしていた団体の方がこれから高天原に出発するとのことでした。これからの出発では遅いような気がしましたが、コースタイムで3時間半程度ですので、暗くなる前には十分着きそうです。結局、便乗して高天原に向かわせてもらうことにしました。自分は、団体の方の後をゆっくり歩くことにしました。 
 
【少しガスの晴れた雲ノ平を眺める】

【岩のごろごろした道】 
 山荘前の道を少し進んで行くと分岐がありますので、そこを山荘とは反対側にある山に向かって登って行きます。この道はルートははっきりしていますが、岩がごろごろしていて歩きにくいです。せっかく山荘で一旦乾かした靴を水たまりに足を突っ込んで再度濡らしてしまうような状況でした。

 ここを越えると、雪渓があり、その向こうに平野が広がります。ここも、ガスがなければ見事な庭園のような場所になっているのでしょう。雪渓を慎重に下り、小川になっている岩のごろごろした道を進んで行きます。

【雪渓と奥の平原】

【電波塔?】
 途中電波塔らしき場所があったので、ここで休憩をして、靴を脱いで少し乾かします。これを繰り返してある程度乾いた後靴下を替えれば、普通に歩けるようになるはずです。この日も小屋泊まりで、乾燥室が使えるという目算もありました。

 このあたりからは、水晶岳と赤牛岳の裾を見ることができました。高天原への道については、あまり意識していませんでしたが、天気が良ければ庭のような景色と、素晴らしい山の展望が拝めそうでした。ちなみにさらに進んで行くと正面に薬師岳が見えるようになるはずです。

【左の赤牛岳と右の水晶岳】 

【雪渓を歩く これだけ見通せれば問題ありません】 

【合間には岩と雪のミックスした道】
 その後も雪渓の上を歩いたり、岩と雪のミックスしたような道を歩いて行きます。正直歩きにくいのですが、周囲のガスが晴れているだけ、迷うこともなく歩きやすくなっています。それに、遠くの山が見られないのは残念にしても、周囲の景色が眺められるだけまだいいかなと思います。この奥スイス庭園と名付けられた場所もなかなか雰囲気があって良かったです。

 その後も着実に下って行きます。途中、雪渓の急坂を下って行くと、木道と合流します。雲ノ平の周遊ルートとのことですが、ガイドには道が載っておらずどこからつながっていたのでしょうか。

【このあたりは奥スイス庭園と名付けられていました(この後標識あり)】 
 
【正面に薬師岳(の南東に伸びるピーク)】

【踏み抜きに気を付けながら急な雪渓の道を下る】

【右の周遊ルートと合流】 

【正面に赤牛岳を眺めながらの下り】

【ハシゴを下る】

【ぬかるんだ樹林帯の道】 
 
【高天原峠】
 この後も、正面に赤牛岳を見ながらの眺めもありますが、やがて樹林帯に入って行きます。本当に駆け下るという表現が正しいかもしれません。この道は雨が降った後ということもあってぬかるみが多かったです。途中ハシゴなども下りながら進んで行きます。かなり下ったかなと思った頃高天原峠に到着です。ここで、再び団体さんと合流して、しばし休憩をしつつ歓談にふけります。関西の方のグループで、折立から入って高瀬ダムに抜けるとのことでした。この途中の高天原を楽しみに歩いて来たとのことで、行き当たりばったりの自分もとても楽しみになって来たのでした。 

【キヌガサソウ】

【あちらこちらに咲くキヌガサソウ】

【湿地の木道】
 ここも団体さんに先に行ってもらい自分はゆっくりと写真を撮りながら進みます。と言っても実はこの時点ではあまり撮るものもないかなと思いつつ歩いていました。高天原峠まで来れば山荘まで1時間程度ですので、正直後は温泉に浸かるだけだと思っていたのでした。

 しかし、歩いてみるとまずはキヌガサソウが出迎えてくれます。実はきちんとキヌガサソウが咲いているのを見たのは初めてで、あちらこちらに咲いていました。花が大きくて、インパクトがあります。うれしくて似たような花の姿を何枚も撮ってしまいました。

【ミズバショウ】 

【ミヤマキンポウゲ】

【浅い小川を渡って行く】 
 その後湿地帯に入り木道を歩いて行きます。すると終わりかけが多かったようですがミズバショウを眺めることができました。このあたりは水が豊富なようで、湿地帯がしばらく続きます。

 やがて小川のようなところを進んで行くと、大きな音が聞こえます。実はここが高天原山荘に行くに当たって懸念していた川でした。増水時丸太の橋の渡渉に注意とあったためです。実際川の水は増していたと思いますが、橋が思ったよりも立派だったので問題なく渡ることができました。後は、ひたすら山荘に向かうだけです。

【雨で水量が増した川】

【思っていたよりもしっかりした橋】

【サンカヨウ】 

【チングルマ】

【コイワカガミ】 

【チングルマの群落】 

【見事なお花畑が続く】

【この湿地はワタスゲの群落】
 この後もお花どころかお花畑が続きます。まずは、木道を歩いて行くとチングルマのお花畑がありました。本当に一面のというのが相応しいほどチングルマの群落を見ることができました。団体さんのリーダーの方が座っていて、思わずここに座りたくなるほどのお花畑だとのことで、全く同感でした。

 その後は湿地帯が出てきて、ミズバショウの他、ワタスゲの群落を見ることができました。ここできちんと望遠を出せば良かったのですが、横着してしまったので、近くに寄った写真を撮らずに過ぎてしまいました。

【正面奥に高天原山荘が】

【ハクサンボウフウ】 

【驚くほど密集して咲いているニッコウキスゲ】
 やがて、山荘が奥に見えて来ました。しかし、今度はニッコウキスゲのお花畑が待っていました。その密集度は今までにないほどで、かなりまとまって咲いていました。本当に高天原峠から山荘までの道は見事なお花の道と言っても良いくらい、ひっきりなしにお花を眺めることができました。正直、この日の悪天候、展望なしの1日が吹っ飛んでしまうくらい素晴らしかったと思います。

 山荘に到着したら受け付けをします。予約をせずに泊まれるか心配しましたが問題ありませんでした。この日の宿泊客が少なかったのもあるでしょう。

【ニッコウキスゲ】

【高天原山荘】

【僅かに姿を見せた赤牛岳】

【温泉への道も登山道】

【ちょっとした小川の渡渉も】
 夕飯前に温泉に行くことにします。小屋でスニーカーを借りて行きましたが、歩きやすいとはいえ登山道なので、登山靴を履いた方がいいかもしれません。また、距離も15〜20分程度とありますが、正直ゆっくり歩くなら行きの下りで20分程度、帰りの登りは30分程度見ておいた方がいいかなという気がします。

 思ったより長く歩いてようやく温泉に到着です。ちょうど帰る方に、男性用は左奥であることを教えてもらいました。女性用に比べると貧弱ですが、男性用も一応囲いがあって更衣室(?)のような場所があります。 

【温泉地 左手前が女性用 左奥が男性用 右中央が共通で一切囲い等はなし】 

【男性用露天風呂】
 温泉は効果抜群で、疲れた体冷えた体をあっという間に温めてくれました。もちろん、前日に温泉に入っていない中での温泉ということで少し差し引いて考えないといけないにしても、よく効いたと思います。何よりロケーションと奥地に来たという充実感が素晴らしいです。ちょうど、先に歩いていた団体さんも入っていて、本当に素晴らしいを連発していました。標高の高い所を見切って来た甲斐があったと思います。結局、夕食の時間を忘れて浸かっていたのでした。翌日の朝の出発が早かったので仕方がないですが、またの機会があれば、朝も入っておきたいですね。ただし、歩く距離は先に書いたようにそこそこあります。

【男性用風呂から正面奥の共通用風呂を眺める】 

【ランプの宿の夜は更けて】
 温泉の後は戻って食事です。ご飯とみそ汁は食べ放題になっていました。意識してお茶を飲んで水分を摂っておきました。この時正面に座られた方と随分アルプスの話で盛り上がってしまいました。北アルプスのルートはほとんど歩いているということで、いろいろな話を聞かせてもらいました。

 この日は、朝から厳しい1日となったわけですが、高天原のお花畑と温泉に癒されて、結果としては充実した1日になったのでした。布団は、全体の2分の1程度しか使われておらず、好きな場所に寝られるような状況でした。こうして、長かった2日目の夜が更けて行ったのでした。 


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