はりのきだけ
 針ノ木岳
登山日: 2014年5月11日(日)   標高:2821m(針ノ木岳)
    標高差:扇沢から約1410m


 5月11日(日)    扇沢 5:10 → マヤクボ沢のコル 7:40 → 針ノ木岳 9:35(〜11:10)
   扇沢 12:50

 

 本日は針ノ木岳に登ります。GWは、鹿島槍ヶ岳と蝶ヶ岳、奥穂高岳と北アルプスの山々に登りましたが、この針ノ木岳も残雪期に登りたいと前々から考えていた山でした。GWに頑張りましたので、この週末はのんびりしても良かったのですが、日曜日の天気予報が良かったので登ることにしました。

 針ノ木岳で気になるのは雪崩と山頂直下の急斜面でしょうか。雪崩については、降雪直後を避けるのとできるだけ雪が緩む前の早い時間帯に登ることが大事なのでしょう。前日が土曜日であったにも関わらず、出発が遅れてしまって、いつものように現地到着は明け方となってしまいました。仮眠を取っていたらすっかり明るくなっていたのでした。

【扇沢無料駐車場】
 
【扇沢駅を見送って】
 それでも、数時間寝ておくだけでも随分違いますので、これはこれで仕方のないところでしょう。まだ空きのある扇沢無料駐車場から出発です。天気は良かったのですが、GWの翌週ということもあって静かだったのかもしれません。とはいえ、立山方面に向かう人はそれなりにいます。

 駐車場から上がって、右手に扇沢駅を見送ると針ノ木岳登山口があります。針ノ木岳自体がこれで3回目ですので、登山口までは問題ありません。問題なのは序盤のルートで、夏道であれば、川の左岸に付けられたルートを歩いて行くのですが、この時期は途中で右岸に渡って歩いて行くことになります。
 
【登山口】

【すぐに雪道が現れて】
 
【河原を横断して】
 樹林帯を抜けて林道を歩き始めると、左手にテープがありました。その先には河原と、やはりテープがあったことからここを横断することにしました。河原を横断して、中州や右岸の斜面を使って進みますが、藪がうっとおしいところや、雪の斜面で硬くなっている箇所もあって歩きにくかったです。結果としては、もう少し進んだ先で渡るのが正解でした。恐らく、残雪の具合でルートが変わってくるのでしょう。自分が通ったルートは、雪がもっと残っていた時期に使われていたのだと思います。

 それでも、何とか右岸を進んで行くと、しっかりとしたトラバース道のトレースが出来ていましたので、それを辿って進んで行きます。

【トレースはあるものの道は歩きにくく】

【本道のトラバース道へ】

【右に大沢小屋と出発しようとしているグループが見えて】

【休憩中のグループ】
 しばらく進んで行くと右手に大沢小屋が見えてきます。それと同時に、後で知ったことですが、高校生のグループがちょうど出発しているところでした。下山時にも会ったのですが、地元の高校生のための登山の講習だったようです。高校生で、残雪期の山でこのような講習をやっているのだなどと感心してしまいました。

 ちなみに、大沢小屋付近では大沢と沢を分けるのですが、その大沢方面に歩いているグループもいました。こちらは、この時期蓮華岳方面に登って行くルートとのことでした。私は、そのまま針ノ木岳方面に向かって進んで行きます。このあたりは、斜度も緩く歩きやすいです。

【爺ヶ岳を振り返って】

【デブリ跡】
 雪の斜面をひたすら登って行きます。途中には、記録で見ていたデブリ跡がありました。ただ、記録に残っていた時と比べると随分小さくなっていました。脇の斜面を見ると、結構亀裂が入っており、どの程度の規模になるのかわかりませんが、やはり雪崩れて来る可能性はあるようです。

 しばらく登って行くとやや急な斜面があり、これを登り切ってややなだらかになって、さらに歩いて行くとマヤクボ沢のコルに到着です。ここから、そのまま左手に登って行けば、針ノ木峠になります。針ノ木峠経由の記録もないわけではないのですが、マヤクボ沢を詰めて、針ノ木岳手前のコルに登るのが最も歩きやすそうでしたのでそのルートを取ります。 

【マヤクボ沢のコルへ向けて最後の登り】

【爺ヶ岳の左は岩小屋沢岳でしょうか】

【マヤクボ沢のコル 左が針ノ木峠方面 右奥が今回登って行く道】

【最初から急斜面が続く】
 分岐付近はそうでもありませんが、コルへ向けて登って行くとそれなりの斜度の斜面となります。もちろん、途中で斜度が変わるとはいえ、やはり1枚の斜面がずっと繋がっていますので、緊張感があります。実際は、滑りにくい雪質で簡単に止まりそうでしたし、滑り落ちてもすっと斜面が続いているだけなので、危険はそれほどないのかもしれませんが、急斜面を見上げたり見下ろしていたりすると、なかなか怖いものがあります。

 沢を詰めて行って、コルに向けて登るあたりが最も斜度があって、今回の登りの核心部と言えるでしょうか。前を歩いていた人のトレースはありますが、表面は硬くても中は柔らかくて、なかなか足元が安定せずに歩きにくかったです。一般的にはモナカ状の雪質と言われているでしょうか。

【左奥のコルへ向けて 2人先行しています】

【爺ヶ岳方面を振り返ると絶景が広がる】

【足元の安定しない急斜面を登る】

【コルから広がる南方の槍ヶ岳や薬師岳などの絶景】
 急登を登り切って、最後に少しトラバースするのですが、そこで斜面を踏み抜きそうになり冷や冷やしながらようやくコルに到着です。フラットフッティングがしっかりできていなくて、体重のかかり方が偏っていたのが踏み抜きそうになった要因だったと思います。やはり、このくらいの斜度や雪質になるとごまかしがききません。このような場所ならともかく、やせ尾根などでは本当に危なかったと思います。

 コルからは絶景が広がっています。稜線は少しなだらかですが、やがて壁のような斜面が出てきます。ここは、足場を見つけてよじ登って行く感じでした。正直下りは考えたくない斜度でしたが、ここも、落ちても鞍部で崖から滑落するような場所ではなかったので、その点はまだ良かったでしょうか。

【針ノ木岳方面への稜線 中央奥のピークはほとんど壁のような斜面です】

【針ノ木岳山頂へ】
 急斜面を登ったら後はなだらかな斜面を登って行くと針ノ木岳山頂です。アイゼンを装着していますし、斜度もそれほどではないので問題はないですが、何気なく針ノ木谷方面に傾いているのが気になるところです。

 山頂からは見事な景色が広がっています。GWにうまく好天を狙って素晴らしい景色を見ることができましたし、この日はそこまで快晴の予報ではなかったので、あまり期待はしていなかったのですが、あまりに素晴らしい景色に驚いてしまいました。特に見たかった黒部湖と立山連峰の眺めは本当に見事でした。GWに登った鹿島槍ヶ岳からの後立山連峰や槍穂の眺めも見事でしたし、富士山や南アルプスまできちんと見えていたのでした。

【黒部湖と立山連峰】

【爺ヶ岳への縦走路と後立山連峰が一望に】

【堂々たる剱岳】

【剱岳をズーム どの方向も険しそうです】

【立山 雄山から大汝山を経て富士の折立】

【スバリ岳との鞍部にはマヤクボ沢から登ってくる山スキーヤーが】

【黒部湖】

【獅子岳〜鬼岳〜龍王岳あたりでしょうか】

【真っ白な五色ヶ原 山荘も見えています】

【赤沢岳〜鳴沢岳の奥に白馬岳】

【GWに登った鹿島槍ヶ岳】

【中央奥が白馬岳 左に旭岳と右に白馬鑓ヶ岳】

【富士山】

【八ヶ岳連峰】

【左奥の富士山と南アルプスの山々】

【高瀬ダムと左は大天井岳から常念岳あたりの稜線 右は槍穂の眺め】

【槍ヶ岳】

【中央奥はGWに登った奥穂高岳】

【撮ってもらった写真に立山連峰がうまく収まっています】

【爺ヶ岳から鹿島槍ヶ岳の稜線】

【蓮華岳】

【平たいところはあまりなかった山頂】
 山頂でのんびりしていると、山スキーの方がちらほら登って来ます。この日登って来た方は、先行していたお2人を除くと、そもそも登っていた方もあまり多くはなかったですが、みなさん山スキーでした。ピッケルは使わずストックでそのまま登ってしまううえに、山頂でスキーを履いて滑って行かれるのですからすごいものです。しばらく話をさせていただきましたが、高度感も麻痺して慣れてしまったとか。アイゼンピッケルよりも、スキーを履いている方が余程安心感があるとのことでした。雪が緩む前にと思っていたのですが、山頂からの素晴らしい眺めと山スキーの方々との会話が弾んでしまって、1時間半以上も山頂にいたのでした。

【マヤクボ沢のコルで訓練中の高校生達でしょうか】

【高瀬ダム】

【乗鞍岳】

【左奥の野口五郎岳への裏銀座の稜線と右奥は水晶岳】

【薬師岳】

【登ってくるスキーヤー】

【蓮華岳への稜線】

【少しトラバースして急斜面を下って行く】

【マヤクボ沢のコルへの下り 沢沿いのルートは実際よりも緩斜面に見えるような気がします】

【正面に爺ヶ岳への素晴らしい稜線を眺めながらの下り】

【ヒップそりでひたすら下る】
 山頂に随分長居をしましたが、さすがに下山開始です。まずは、最後によじ登った場所を下るわけですが、さすがに後ろ向きに下ります。雪が締まっていれば問題ないのですが、微妙に柔らかくて踏み抜きそうになってしまうのが、岩場と違うところです。滑り落ちても問題はないので、あまり蹴り込まずに下って行きます。

 その後は、コルから急斜面を下って行きます。やはり、トラバース部分は嫌な感じでしたが、その後何人かが通過して踏み固められていたので、多少は歩きやすくなっていました。その後の最も急な斜面は普通に下って行きましたが、少し緩くなってからは急斜面でもシリセードを交えて下って行きました。もちろん、急斜面ですからヒップそりは使っていません。

【亀裂の入った斜面】

【川を渡る高校生達】

【下り終えて登山口へ】 
 とはいえ、岩の出ている箇所もありましたので、滑るのと歩くのは半々くらいだったでしょうか。この時間はまだ登ってくる方も結構いて、その脇を一気に下ったのでした。

 マヤクボ沢のコルに到着したらヒップそりの出番です。この後は、若干急な斜面もありますが、基本的には緩やかな斜面ですのでヒップそりで下って行きます。ヒップそりを使うにはやや急な斜面もあって、場所によっては結構なスピードが出てしまいました。デブリで遮られたりしながらも、楽しく下って行きました。大沢小屋の手前くらいまで頑張って滑った後は、トラバース道を歩いて戻って行きます。ちょうど、登りで見かけた高校生のグループが川を渡っていましたので、追随させていただくことにしました。
 川は雪の下を流れているわけですが、やはり厚いところ薄いところがあって、指導員の方が親切に歩ける場所を教えてくれました。数日たてばもう危ないだろうということで、日々刻々と状況が変わっているようです。

 その後は普通に夏道を歩いて行くだけです。もちろん雪は残っているわけですが、特に問題なく登山口、そして駐車場まで戻ってくることができました。GW明けで静かだなと思っていましたが、立山方面は賑わっていたようで、駐車場はほぼ満車になっていました。ただ、有料駐車場は十分空きがありましたので、そういう意味では静かなものだったと思います。

【ほぼ満車になった駐車場へ】
 かねてより狙っていた残雪期の針ノ木岳ですが、思っていた以上の素晴らしい山でした。雪崩のリスクを除けば、展望は素晴らしく、コースもおもしろいです。また、比較的危険に曝されることなく急斜面を登れますので、いい練習にもなったのではないかと思います。ただ、雪崩だけでなく、ルートによってはいろいろな危険が潜んでいますので油断は禁物でしょう。毎年とまでは言わなくとも、何年かに1回は登りたい山ですね。


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