きたのまただけ・くろべごろうだけ・やくしだけ | |
![]() |
|
登山日: 2014年5月23日(金)〜5月25日(日) | |
標高:2661m(北ノ俣岳) 2840m(黒部五郎岳) 2926m(薬師岳) | |
累積標高 約3600m(飛越新道登山口から薬師岳まで約1480m) |
5月23日(金) | 飛越新道登山口 8:00 → 寺地山直下 11:40 | ||||
→ | 北ノ俣避難小屋 12:35 → 稜線出合〜北ノ俣岳 15:20 | ||||
5月24日(土) | 北ノ俣岳付近 4:20(〜5:30) → 黒部五郎岳 7:20(〜8:10) | ||||
→ | 稜線出合 10:15(〜11:00) → 太郎平小屋 12:00 → 薬師岳山荘 13:45 | ||||
→ | 薬師岳 15:00 → 太郎平小屋 17:15 → 稜線出合 19:30 | ||||
5月25日(日) | 稜線出合 6:05 → 寺地山直下 7:50 → 飛越新道登山口 10:30 |
ぐっすり寝ていたようで日が替わった頃に目が覚めます。もう少し寝ていたいような気分でしたが、翌日の夜はあまり条件が良くなさそうでしたので、がんばって写真を撮ることにしました。結果としては、翌日は強い風が始終吹いており、しかもガスに覆われたままでしたので、この日にがんばっておいて良かったと思います。 夜になっても締まらない雪に足を取られて移動は大変でしたが、風が穏やかだったので、安物の三脚でもそれなりに写真を撮れたのは良かったでしょうか。ピントが合っていなかったり違う方向を映していたりなど試行錯誤をしながら撮りました。 |
![]() 【試行錯誤をしながら撮りますが】 |
|
![]() 【夜景は完全にピンボケ】 |
ロケーションとしては、薬師岳を背景にした星空が一番良かったのですが、如何せん全然ピントが合っていませんでした。時間をかけていろいろ撮った割にはあまり成果が上がりませんでしたが、それでも何枚かは自分なりにはよく撮れていたので良かったと思います。 午前1時頃から撮り始めて、適当に移動もしていたので、撮り終わったのは3時過ぎでした。風が穏やかとはいえ、気温は結構下がっていたので、いくら厚着をしていたとはいえ寒くなって来ました。戻ってひと眠りと言いたいところでしたが、この時期は夜明けも早いので、すぐに出発の準備を始めました。 |
|
![]() 【星は多く映っていますがやはりピンボケ】 |
||
![]() 【テントと星空 一番よく撮れた写真でしょうか】 |
||
![]() 【薬師岳のロケーションは良かったですがピントが合わず】 |
この日、調子が上がらず疲労が積み重なった原因の1つは、結果としては午前1時頃からずっと行動し続けたこともあるかもしれません。いつも夜景を撮っている方は本当にすごいなと思います。 準備ができたら再度出発します。夜明け前の紅く染まった稜線も見たいと思って、結局4時前にはテントを出ることになりました。雪は締まっていたと思ったら、また踏み抜く感じで参りましたが、このあたり以外は日がすっかり昇るまではそれほどひどい踏み抜きはなかったと思います。 |
|
![]() 【鷲羽岳から黒部五郎岳 三日月が明るすぎました】 |
||
![]() 【北ノ俣岳から昇る天の川】 |
||
![]() 【夜明けの薬師岳〜水晶岳】 |
||
![]() 【水晶岳〜黒部五郎岳と夜空に残る月】 |
||
![]() 【夜明け前の北ノ俣岳山頂と薬師岳】 |
||
![]() 【水晶岳と雲ノ平】 |
||
![]() 【赤牛岳の肩から昇る御来光】 |
||
![]() 【すっきりと見えた御来光】 |
北ノ俣岳からはこの日も素晴らしい景色が広がっています。ここでじっくりご来光を待っても良かったのですが、この日の朝は冷え込んでいてじっとしていると寒かったのと、雪が締まっているうちにできるだけ進んでおきたいということで、御来光が見えそうな範囲で先に進むことにしました。 前日に登った山スキーの方のトレースがありますが、ショートカットするように場所によっては結構な斜面を通っていることから、自分で歩きやすい場所を探して進んで行きます。北ノ俣岳以降は雪も締まって歩きやすかったです。急な斜面もよくアイゼンが効いて安心感がありました。 |
|
![]() 【夜明け直後の景色】 |
||
![]() 【夜明け直後の黒部五郎岳への稜線】 |
||
![]() 【夜明け直後の乗鞍岳】 |
||
![]() 【薬師岳を振り返る】 |
||
![]() 【夏道は出ているものの歩きにくそうなので手前のピークはスキートレース同様に左に巻く】 |
||
![]() 【いよいよ黒部五郎岳への登り 夏道は一部出ているもののその左手を直登することに】 |
||
![]() 【振り返ると北ノ俣岳〜薬師岳の絶景が広がって 斜度は写真と比べればそれなりにあります】 |
||
![]() 【いよいよ山頂へ】 |
||
![]() 【頂上碑とマイピッケル】 |
しばらく歩いて行くと夏道が出ている箇所もありますが、肝心の斜度のあるところはほとんど雪に埋もれていて、雪が締まっていてアイゼンを装着している状態では使う気が起きませんでした。 結局山頂手前のピークも最後の登りも雪面を歩くことにしました。さすがに最後の登りは場所によってはそこそこの斜度がありますが、アイゼンがよく効いたので思ったよりは楽に歩けたと思います。ただ、場所によっては爪の半分くらいしか刺さらなかったので、GWあたりはもっと条件が厳しかったのかもしれません。最後斜度が緩やかになって稜線に出ると間もなく黒部五郎岳の山頂です。 |
|
![]() 【槍ヶ岳〜穂高連峰〜笠ヶ岳】 |
||
![]() 【笠ヶ岳〜乗鞍岳〜御嶽山】 |
||
![]() 【槍ヶ岳〜穂高連峰】 |
||
![]() 【水晶岳〜祖父岳〜鷲羽岳】 |
||
![]() 【白山もくっきりと】 |
||
![]() 【御嶽山】 |
||
![]() 【乗鞍岳】 |
||
![]() 【端正な笠ヶ岳】 |
||
![]() 【穂高連峰】 |
||
![]() 【大キレット】 |
||
![]() 【槍ヶ岳〜南岳】 |
||
![]() 【槍ヶ岳】 |
||
![]() 【三俣蓮華〜双六岳】 |
||
![]() 【ワリモ岳〜鷲羽岳】 |
||
![]() 【発達した雪庇】 |
山頂からはパノラマの景色が広がっています。山頂付近の雪庇が発達していて、どこまで歩けるのかがわからなかったので写真は撮りにくかったのですが、素晴らしい景色が広がっていることに変わりはありません。槍穂の山並みから雲ノ平を経て薬師岳に至るまでの山々が比較的近距離で見られる素晴らしい展望台だと思います。距離などを考えると先に薬師岳を持ってきた方がいいのですが、これが先に黒部五郎岳をもってきた理由でした。 結局1時間近く山頂で過ごしました。この日薬師岳に登るかどうかは決めかねていたので、このあたりで下山に取り掛かることにしました。黒部五郎岳しか登らないのであれば、まだ雪は締まっているでしょうから、もう1時間くらいはいても良かったかもしれません。 |
|
![]() 【太郎平小屋の奥に見えているので鍬崎山か】 |
||
![]() 【薬師岳】 |
||
![]() 【薬師岳の奥に連なる山々 左奥は剱岳 右奥は立山】 |
||
![]() 【中央奥は白馬岳】 |
||
![]() 【堂々たる赤牛岳】 |
||
![]() 【水晶岳】 |
||
![]() 【赤牛岳から水晶岳の稜線と雲ノ平】 |
||
![]() 【北ノ俣岳へ白い稜線】 |
||
![]() 【北ノ俣岳〜薬師岳の稜線】 |
||
![]() 【随分出てきた夏道】 |
![]() 【急斜面を下る】 |
|
![]() 【急登を振り返る】 |
||
![]() 【アップダウンの続く稜線を戻って行く】 |
まずは少し肩の方に緩やかに下って行った後、登ったルートをそのまま下って行きます。時々雪が緩んだ感触が嫌な感じでしたが、まだまだ雪が締まっていたので順調に下って行きます。仮に足を滑らせても鞍部までずっと雪面が続いているので、プレッシャーが少ないのかもしれません。 その後はアップダウンを繰り返しながら戻って行きます。やはりこの日も気温がぐんぐん上がっており、稜線を半ば戻ったあたりからは結構雪が緩んで来ました。ただ、一部を除いては足が嵌るところまではいかなかったので助かりました。むしろ問題だったのは体調の方で、体調が悪いというわけではないのですが、どうも力が入らないというか疲れやすい状態でした。 |
|
![]() 【稜線半ばより振り返った黒部五郎岳は格好良かったです】 |
||
![]() 【薬師岳〜赤牛岳〜水晶岳】 |
||
![]() 【北ノ俣岳手前より振り返る】 |
||
![]() 【展望の広がる北ノ俣岳山頂】 |
もう少しで北ノ俣岳だと思ってからが長く、緩やかな登りながら結構しんどかったです。さらに暑くなると思われた翌日の日曜日のことを考えると、3日目は涼しいうちに下るだけにして、2日目に目一杯歩いておきたいところでしたが、体調と薬師岳までのコースタイムを考えると悩ましいものがありました。 北ノ俣岳での展望を少し楽しんだ後、稜線のテントに戻ります。左手に見えた有峰湖が印象的でした。とにもかくにもテントに戻って休憩をすることにしました。 |
|
![]() 【薬師岳に行くかどうか】 |
||
![]() 【有峰湖が良く見えて】 |
||
![]() 【薬師岳へ向けて出発することに】 |
テントに戻って休憩をしていると体力的には回復してきました。ただし、ぐんぐん上がっている気温と先ほどの疲労感の方が気になるところでした。結局、この日は好天が続く予定であったことと、日が長いことから薬師峠まで下って来られれば問題ないだろうということで決行することにしたのでした。結果的には、日が傾くにつれてガスに覆われて来て、急速に気温が下がって来るなど思っていたのと違った天候になるなど見通しの甘さを痛感することになります。 テントを出たらまずは太郎平小屋へ向けて緩やかに下って行きます。この時は調子よく一気に下って行ったわけですが、これが帰路は登りとなると同時に距離が結構あって大いに苦しめられることになります。 |
|
![]() 【左の太郎平小屋と右の薬師岳】 |
||
![]() 【太郎山から続く雪壁 左手から回り込むべきでした】 |
しばらく歩いているとピンクのテープとトレースがありました。最初小屋の関係者の方のものだと思ったのですが、実際は所々で考えて歩いている箇所もあって、結果としては日帰りまたは避難小屋泊で薬師岳に登った方のトレースだったのでした。ただ、この時はそれとは知らなかったのでトレースをいただいて進むことにしました。 しばらく下って行くと雪の壁が続いており、その手前を巻くようにして進みましたが、結果としては回り込んで上を歩いた方が良かったです。途中で太郎平小屋へ行く手前で雪の斜面をトラバースする必要が出てくるためです。そこまで危険ではありませんが、アップダウンがあるなど少し大変になります。 |
|
![]() 【水晶岳からぐるっと黒部五郎岳に至る山々】 |
||
![]() 【薬師岳から鷲羽岳に至る山々の素晴らしい景色】 |
||
![]() 【ひっそりとした太郎平小屋と薬師岳】 |
翌週には小屋の営業を再開する太郎平小屋でしたが、この日はひっそりとしておりました。恐らくGW営業の際にある程度準備は済ませていたのでしょう。小屋の脇をそのまま薬師峠に向かって歩いて行きます。雪のない時期はハイマツ帯の木道を歩いて行きますが、この時期は広々とした尾根を歩いて行く感じでしょうか。そのせいか、このあたりは結構踏み抜きがありました。 しばらく歩いて行くと薬師峠に向かって下って行きます。下った後は急登を登って行くことになるわけですが、アイゼンを装着しようか迷って、結局雪がほどよく緩んでいたことからアイゼンなしで登ることにしました。体力温存を優先したことを除いても、結局薬師岳への往復ではアイゼンを使うことはありませんでした。 |
|
![]() 【どっしりとした薬師岳】 |
||
![]() 【薬師峠と薬師平への急登】 |
||
![]() 【樹林帯の道】 |
薬師峠までの下りはもちろん問題なかったのですが、やはりそこからの登りはしんどかったです。正直、薬師岳の往復までならなんとかという感じで、北ノ俣岳手前まで戻ることを考えると厳しいかなと思っていたのですが、皮肉にもその通りの結果となってしまったのでした。 基本的にはトレースを追いつつ歩きやすいところを登って行きます。実は薬師岳山荘に続く尾根にどう登るかによって方向が変わってくるわけですが、とりあえず斜度を見てからということで、直登も可能な方向で登って行きました。登りきると緩やかになって広々とした雪原が広がっています。奥には稜線の肩となるピークが見え、振り返ると歩いて来た稜線がよく見えました。 |
|
![]() 【振り返って黒部五郎岳と北ノ俣岳】 |
||
![]() 【中央右への直登ルートも見えますが】 |
肩への直登コースも魅力的ではありましたが、やはり体力を温存するには遠回りでも一定の斜度のところを歩いた方がいいということで、尾根に沿って南側に回り込むように登って行きました。やや斜度のあるところでは踏み抜きもありましたが、このあたりではそこまでひどくはなくて助かりました。 ちょうどこのあたりを歩いていた時に下って来る登山者を見かけました。途中から見かけたトレースを付けていた方に間違いないでしょう。自分よりもさらに大回りで歩いていたために、結局話す機会はありませんでしたが、かなりの健脚の方のようでした。先にも書きましたが、恐らく日帰りがせいぜい避難小屋に1泊といったところでしょうか。 |
|
回り込んで肩に向かって登って行きます。肩のあたりは、かなり雪が溶けていましたが、夏道そのものはこの溶けたあたりの脇にあるようで、雪のないところを歩こうとするとハイマツはともかく、高山植物まで踏んでしまいそうでしたので、脇の雪道を歩きました。ここはとにかく踏み抜きがひどくて登りでも下りでも難儀しました。 肩に出て少し歩くとほぼ夏道になります。しばらく歩くと薬師岳山荘に出ますが、入口付近はべったりと雪が付いていました。少し休憩をしたら、正面の避難小屋へ向けて登って行きます。過去2回登った時の感覚ではもう一息なのですが、いまいち調子の出ないこの日は、ここからでも山頂までが長く感じられました。 |
![]() 【肩への登り】 |
|
![]() 【一旦雪のない場所に出ますが道がないので結局雪道に戻りました】 |
||
![]() 【入口が雪で塞がれた薬師岳山荘】 |
![]() 【薬師岳の肩への登り】 |
|
![]() 【黒部五郎岳からの歩いて来た稜線を見下ろして】 |
||
![]() 【お馴染みの避難小屋?】 |
薬師岳の肩への登りは雪の溶けている箇所もありますが、基本的に雪の斜面を利用して登って行きます。しんどかったですが、一定の斜度ですのでゆっくりゆっくりと登って行きます。石室のような避難小屋が見えて一息付くことができました。 雪のない時期であれば、後は緩やかなトラバース道ですが、やはり懸念していた通り、この先に雪の斜面のトラバースがあって気を使う場所もありました。それ以上に厄介だったのが、ここから山頂の間だけで吹いていた強烈な風で、気温は随分高かったにも関わらず、じっとしているとあっという間に体温を奪われてしまう状態でした。 |
|
![]() 【山頂への稜線歩き】 |
||
![]() 【ようやく薬師岳山頂へ 雪庇のせいか右手が大きく広がっています】 |
||
![]() 【薬師岳山頂】 |
山頂は雪庇のせいでやや後立山側の山が見にくかったですが、祠の奥に立つときちんと見ることができました。疲労度は大きく、強風と相まって写真を撮るのもなかなか大変でした。順調に歩けるのなら、少しのんびりしていてもいい時間ですが、先の通りじっとしていると体温が奪われるので、一通り写真を撮ったらすぐに下山を開始します。 最初はとにかく慎重にトラバースを進みます。避難小屋あたりに出ると、不思議なくらいに風がなくなり一気に暑くなるので、羽織っていた上着を脱いで手袋を替えて下って行きます。このあたりになると、疲労に加えて残りの水も気になって来る状態で、節約しながら飲んでいました。 |
|
![]() 【赤牛岳から水晶岳を経て槍ヶ岳方面まで続く眺め】 |
||
![]() 【中央から左は立山連峰の山々 右奥に後立山連峰の山々が並ぶ】 |
||
![]() 【角度が変わって雰囲気も変わった水晶岳】 |
||
![]() 【赤牛岳】 |
||
![]() 【一昨年縦走した立山連峰へ連なる山々 左奥に剱岳と右奥に立山】 |
||
![]() 【槍ヶ岳】 |
||
![]() 【針ノ木岳と蓮華岳】 |
||
![]() 【鹿島槍ヶ岳】 |
||
![]() 【後立山連峰の山々 唐松岳〜五竜岳〜鹿島槍ヶ岳】 |
||
![]() 【立山(雄山)と龍王岳】 |
||
![]() 【剱岳】 |
||
![]() 【北薬師岳と真っ新な雪の斜面】 |
||
![]() 【北ノ俣岳〜太郎山への稜線は遠く】 |
||
![]() 【ライチョウに癒されて】 |
||
![]() 【絶景を眺めながらの下り】 |
||
![]() 【太郎平小屋と太郎山】 |
これだけ歩きやすい雪道を下るのであればあっという間なのがいつもですが、この日はこの下りでも途中でばてるような状態でした。それでも、やはり下りではありますのでそれなりのペースで下って来ることができました。薬師峠に到着してからが勝負といったところでしょうか。 薬師峠からの登りはきつかったですが、なんとか登って来て太郎平小屋付近に到着です。帰路は往路を反省して太郎山経由で戻ります。薬師岳を登った方のトレースも帰路は太郎山に登るルートを取っていました。せっかくなので、これを利用して本当にゆっくりゆっくり登って行きました。とにかく最後まで体力を残すことを意識して歩いていました。 |
|
![]() 【太郎山から振り返った太郎平小屋と薬師岳の素晴らしい眺め】 |
||
![]() 【つがいのライチョウ】 |
||
![]() 【徐々に雲に覆われて】 |
||
![]() 【徐々に稜線もガスに覆われて】 |
||
![]() 【緩やかに登り出してからが遠く】 |
太郎山を経由して緩やかに方向を変えて行きます。往きで利用した道と合流するあたりからは、緩やかではありますが登り返しになります。本当にこのあたりは一歩一歩踏みしめながらというのが適当でしょうか。 太郎山に登ったあたりから雲行きが怪しくなってどんよりとした雲に覆われるようになって来ました。同時に気温も一気に下がって来て、結構風も吹いてくるようになってきました。予報通りではないとはいえ、日没が近づいてくればこのように変化することは十分考えられるでしょう。稜線もずっと覆われたままではないとはいえ、徐々にガスに覆われて来て、焦るところですが、消えかかったトレースを見落としたり、方向を間違えたりしないようにゆっくり歩いて行きます。 |
|
最初はガスに覆われてもすぐに晴れるような状況でしたが、徐々に覆われている時間の方が長くなります。同時に気温の方も、最初は下がってむしろちょうど良かったくらいの状態が寒さを感じるようになってきました。体力もぎりぎりでしたので、手袋を厚いものに替えるなどして、ぎりぎりの体力を温存しながら歩いて行きました。不思議だったのは、これほどの状態であってもなぜか薬師岳だけは振り返ると見えていたことです。結果としては、テントに入る直前まで見えていて、ずっと見守ってくれていたのでしょうか。 まだ明るいうちに薬師岳を撮ってからが長く、その後1時間以上も歩くことになりました。 |
![]() 【振り返ると薬師岳はまだ見えて】 |
|
![]() 【真っ暗になっても見えていた薬師岳】 |
どんなに遠くに思えた場所も、歩き続けていればいつかは着きます。ようやく夏道のあるピークを左に見ながら通り過ぎてなだらかになって来ると稜線出合のテントが近づいて来ます。ひどい踏み抜きすら近づいた証拠としてうれしくなってくるような状態でした。こうして真っ暗になった頃ようやくテントに戻って来ることができました。振り返るとガスが再び部分的に晴れて薬師岳がどっしりと見えていました。 風が強まって気になっていたテントですが、昼間の暑さで雪が溶けてひどいことになっていたにも関わらず飛ばずに済んで良かったです。テント設営時には気にならなかった誤算が、この雪溶けだったのでした。ちなみに、薬師岳に出発した頃はまだほとんど溶けていなかったはずです。 |
|
明らかに風が強まっているのはわかりましたので、余力があれば雪壁を作り直したいところでしたが、とてもその力はなく、もう一度きちんと張りなおすのが手一杯でした。風速は15Mまでは超えそうもないこと、朝にはある程度落ち着きそうであることから、風に耐えて辛抱することにしました。正直疲れ切っていたので、寝てしまうにはちょうど良かったのかもしれません。簡単に整理をした後はそのまま寝てしまいました。 夜の間は風が強く、また再びガスに覆われてテントの周りは真っ白でした。さすがにテントが揺らされれば気にならないわけはありませんが、それでも眠気の方が勝って、寝床に入った後はそれなりに寝ることができたのではないかと思います。 |
![]() 【昼間に一気に雪が溶けてテントがひどいことに】 |
|
![]() 【撤収して壁を壊したテント場 雪解けでハイマツが】 |
3日目の朝を迎えます。明け方になっても風がなかなか弱まらなかったのですが、さすがに夜明けの時間が過ぎて明るくなってくると徐々に風も穏やかになって来ました。前夜は片付け半ばで寝てしまったので、片付けをしながら風が穏やかになるのを待ちます。 片付けが一段落した頃、風も撤収するには問題ない程度まで穏やかになったので、一気に撤収をしました。ほとんど壊れていた壁も崩してならせるところはならしておきました。初日には全く見えなかったハイマツが随所に現れて来ているのは、それだけ雪解けが進んでいる証拠でしょうか。周囲の景色を見ても2日間でも随分変わったなと思います。 |
|
稜線はガスに覆われて全く景色がありませんでしたので、アイゼンを装着して気を引き締めて下山に取り掛かります。午前6時過ぎとなかなかいい時間に下り始めることができたのではないかと思います。下り口を間違えないようにと思っていたのですが、きっちりトレースが残っていたのでした。 トレースは尾根筋のハイマツ帯に入っていたので、少し利用してみたのですが、ハイマツ帯をかき分けるのが大変でしたし、アイゼンも装着していましたので、やや急な斜面になりますが、登りで使った脇の雪の斜面を下って行きました。下ってみるとそこまで急には見えなかったりします。取り付きまで下って振り返ってみると、稜線のガスも徐々に晴れているようでした。 |
![]() 【稜線はガスの中】 |
|
![]() 【トレースは意外に残っていて】 |
![]() 【一気に下って行く】 |
|
![]() 【稜線への取り付きから振り返るとガスが晴れて来て】 |
その後も順調に下って行きます。登りでは夏道を拾いましたが、アイゼンを装着しましたので、下りでは逆に雪の繋がった場所を探して下って行きました。水は足りそうではありましたが、念のために避難小屋に寄って水を補給しておくことにしました。 鞍部まで下って来ると寺地山への登り返しとなります。このあたりは雪の積もり方にむらがあって凹凸が結構あるものですから歩きにくかったです。まだ涼しく、雪もほどほどに締まった時間に歩けたのは大きかったと思います。しばらく登ると寺地山直下に出ます。 |
|
![]() 【北ノ俣岳とうっすらと見える太陽】 |
||
![]() 【寺地山への樹林帯の登り返し】 |
ここは、登りではすっかりガスに覆われていましたが、この時には大展望が広がっていました。ただ、晴れて来たとはいえ、まだもやっとした感じですっきりとした展望ではありませんでした。それでも、黒部五郎岳や薬師岳の一部も見えていたのでした。 その後は、なだらかな道を寺地山方面に歩き、寺地山の手前を折れて緩やかに下って行きます。比較的単純な尾根道なのですが、少し逸れかかってしまいました。時々ルートを修正しながら歩いて行くと神岡新道分岐の看板がありました。 |
|
![]() 【寺地山直下からの展望 稜線は見えてはいますがもやっとした感じです】 |
||
![]() 【倒木に付いていた寺地山頂上碑】 |
![]() 【尾根も開けた場所に出て】 |
|
![]() 【神岡新道分岐看板】 |
ここからは再び緩やかに下って行きます。下山時は全体的に比較的ルートがわかりやすくなっていましたが、この下りだけは少しわかりにくかったです。雪が少ないのでわかりましたが、雪の多い時期、特にガスに覆われている時などは注意が必要なのでしょう。 下って行くと稜線付近と同様にここ2日間だけでも随分溶けたようで、夏道の露出も結構増えていたと思います。一方で中途半端に雪が残っているところが歩きにくかったり、夏道の出た所は名物(?)のぬかるみになっていたりして、必ずしも歩きやすくなっているとは言えないかもしれません。 |
|
![]() 【倒れた笹でやや藪っぽく】 |
![]() 【随分夏道が出てきました】 |
|
![]() 【笹原と鉄塔】 |
飛越新道に入って半ばあたりまで来るとほぼ雪もなくなって来ます。結局その手前あたりまでアイゼンを装着していました。 雪がほぼなくなれば快適に歩ける予定でしたが、今度は気温が上がって来て汗を掻きながらの下りとなりました。この暑さを考えると、やはり朝一で下ることにしたのは正解だったのかなと思います。この飛越新道からのルートは、意外とアップダウンもありますので、下りと言えども、そこまで楽ではない気がします。トンネルの上を越えるように歩き、最後急坂を下って行くと登山口に到着です。この日は順調に下って来ることができたのではないかと思います。 |
|
今回は時期的にあまり訪れる人がいないであろうとは思いましたが、思った通りの静かな山行だったと思います。1日目の午後から2日目に好天に恵まれて素晴らしい景色を楽しむこともできました。2日目に無理をしたのは反省点ですし、やはり全般的に大変ではありましたが、それだけ充実した山行となりました。 GWに続く残雪期テント泊だったわけですが、いい締めくくりになりました。来年もまたこのような素晴らしい残雪期のテント泊ができるといいなと思います。 |
![]() 【登山口へ】 |
|