北アルプス縦走・雲ノ平周回(1〜2日目 親不知〜白馬岳頂上山荘)
  登山日: 2015年9月19日(土)〜28日(月)  
  標高:1287m(白鳥山) 1593m(犬ヶ岳) 1624m(黒岩山) 2267m(長栂山) 2418m(朝日岳)
      2611m(雪倉岳) 2932m(白馬岳) 2903m(白馬鑓ヶ岳) 2812m(天狗ノ頭)
      2696m(唐松岳) 2814m(五竜岳) 2889m(鹿島槍ヶ岳) 2670m(爺ヶ岳)
      2630m(岩小屋沢岳) 2678m(赤沢岳) 2752m(スバリ岳) 2821m(針ノ木岳)
      2799m(蓮華岳) 2551m(北葛岳) 2509m(七倉岳) 2297m(船窪岳)
      2601m(不動岳) 2625m(南沢岳) 2924m(野口五郎岳) 2841m(三俣蓮華岳)
      2860m(双六岳) 2755m(樅沢岳) 3180m(槍ヶ岳)
      2840m(黒部五郎岳) 2924m(鷲羽岳) 2825m(祖父岳)
 10日間(9日間)歩行距離 172km 累積登り 17,800m 累積下り 16,400m
 山と高原地図によるCT合計 125時間 10日間(9日間)行動時間(出発→目的地まで) 94時間

 

 9月19日(土)    親不知〜海岸 9:25(〜10:10) → 白鳥小屋 14:50 → 栂海山荘 17:45
 
 9月20日(日)  栂海山荘 3:55 → 犬ヶ岳 4:05 → さわがに山 5:20 → 黒岩山 6:35
   長栂山 9:00 → 吹上のコル 9:45 → 朝日岳 10:15(〜35)
   雪倉岳 13:50 → 白馬岳 17:00 → 白馬頂上山荘 17:30
     
9月21日(月)    白馬岳頂上山荘 4:35 → 白馬鑓ヶ岳 6:20 → 天狗山荘 7:00 → 天狗の頭 7:30
   不帰U峰北峰 9:40 → 唐松岳 10:30 → 五竜山荘 12:30
     
9月22日(火)    五竜山荘 4:25 → 五竜岳 5:20(〜45) → キレット小屋 8:00
   鹿島槍ヶ岳北峰 9:15(〜45) → 鹿島槍ヶ岳南峰 10:05 → 冷池山荘 11:20
   爺ヶ岳南峰 12:35 → 種池山荘 13:00 → 岩小屋沢岳 14:30 → 新越山荘 14:45
     
9月23日(水)    新越山荘 4:10 → 赤沢岳 5:20(〜45) → スバリ岳 6:45
   針ノ木岳 7:40(〜8:10) → 針ノ木小屋 8:40(〜9:10) → 蓮華岳 10:10(〜25)
   北葛岳 11:55(〜12:30) → 七倉岳 13:30(〜14:00) → 船窪小屋 14:25
     
9月24日(木)    船窪小屋 4:30 → 船窪岳第二ピーク 6:20 → 不動岳 8:10 → 南沢岳 9:20
   烏帽子小屋 10:25 → 野口五郎小屋 12:50(〜13:15) → 野口五郎岳 13:25
   水晶小屋 15:05(〜25) → 三俣山荘 16:50
     
9月25日(金)    停滞
     
9月26日(土)    三俣山荘 4:45 → 三俣蓮華岳 5:30 → 双六岳 6:30 → 双六小屋 7:25
   樅沢岳 7:55 → 槍ヶ岳 10:40(〜11:00) → 槍沢ロッジ 13:30
   徳沢ロッジ 14:50 → 上高地 16:10
     
9月27日(日)    折立 6:45 → 太郎平小屋 8:55 → 北ノ俣岳 10:25 → 黒部五郎岳 13:10
   黒部五郎小舎 14:40
     
9月28日(月)    黒部五郎小舎 4:05 → 三俣蓮華岳 5:25(〜45) → 三俣山荘 6:20
   鷲羽岳 7:20(〜50) → 祖父岳 9:05 → 雲ノ平山荘 10:05
   祖母岳 10:20(〜45) → 薬師沢小屋 12:30 → 太郎平小屋 14:25
   折立 16:10

 

 本日から10日間を利用して北アルプスを縦走します。実は昨年から3泊4日または4泊5日の行程のルートを南北アルプスにそれぞれ1本ずつ考えていて、昨年も今年もこれまで実行できずにいましたので、そのうちどちらかをシルバーウイークにやりたいと考えていました。しかし、夏休みがなかなか取れずに9月も後半になったので、シルバーウイークの後に休暇を取ることにしました。結果的には狙っていたわけではないのですが10連休となったことから、これだけの連休があるからこその縦走をしようと思ったのが、この北アルプスの海抜0メートルからの縦走でした。今までは一週間以上の連休が取れた時には、三百名山をやっていた関係上まとめて登っておきたい北海道の山に当てていましたから、北海道以外の山では初めて長い連休を当てることになります。

 実は栂海新道は元々それほど興味がなかったのですが、最近そこを歩いた記録を読んだり、前週の雨飾山でその稜線を眺めたりしたことから実行することを決めたのでした。

【早朝の新島々駅】
 
【松本へ】
 テント泊で繋ぐ場合、親不知から上高地まで行くことを考えると、毎日10時間以上歩いても9〜10日間はかかる計算でした。ですから、栂海新道はできるだけ下りで使いたかったのですが、シルバーウイークに上高地から入るとひどい混み具合が想定されたことから、かなり厳しくても親不知から登って行く方向を選んだのでした。もちろん親不知から登っても、朝日岳以降の主稜線ではひどく混むことは予想されましたが、少なくとも初日と2日目はそこまでは混まないだろうという計算でした。また、車を回すことを考えた時に、新島々へ歩いて行ける範囲に車を置くことで、10時前までに親不知まで行けるのが大きかったです。このくらいの時間が何とか白鳥小屋まで到着できるぎりぎりの時間でしょうか。帰りは上高地に夜の6時までに戻って来れば新島々まで戻れるのは大きかったです。

 装備はテント泊ですが、寝袋は寒いのは我慢して薄いものにするなど軽量化して、48リットルザックに行動用の水を含めても14キロにしました。やはりこれだけの行程ですので、GPSやスマホの予備バッテリーなどは外せずそれなりの重さは必要になります。食料は5日分として、ある程度は小屋泊を前提としました。とにかく確実に縦走することを最優先として、行ける時にはできるだけ進んで、条件の悪い時は歩く距離を短くするなり停滞することにしました。
 
【短い区間ですが初めての北陸新幹線】

【残念ながらぶれてしまいました】
 
【最後は親不知駅へ】
 初日は夜明け前に駐車した後、新島々駅まで歩いて、まずは松本駅に出ます。なお、新島々駅はこれから上高地や乗鞍高原へ行こうという登山客で大賑わいでした。やはりこれからシルバーウイークが始まるのだということを実感させられます。登山者らしい人で松本行きの電車に乗る人はさすがに他にはいませんでした。

 松本駅からは在来線を乗り継いで長野駅に向かいます。途中線路に立ち入った人がいたということでしばらく電車が止まってどうなるかと思いましたが、元々長野駅での待ち時間が結構あったので、何とかなりました。長野駅からは初めての北陸新幹線に乗って糸魚川駅に出ます。このルートの鍵は新幹線で、白馬方面から在来線で回るのではなく、長野駅に回って新幹線を使うことで、比較的短時間で回って来ることが出来ます。糸魚川駅からは在来線で親不知駅に向かいます。今回幸運だったのは、この列車に乗った時に同じボックスに座っていた単独行の方の2人がちょうど同じく栂海新道を登る方々で、そのうちの1人の方がタクシーを予約されていましたので、便乗して乗り合わせをさせていただけたことです。当初は危険な国道を歩くことを考えていましたので、安全かつ短時間で登山口に向かえたのは大きかったです。逆に言えば、ここは歩道のほとんどない国道の危険性や時間を考えると、タクシーを予約しておいた方が本来はいいのでしょう。歩いている方の記録は結構ありますので、注意をすればもちろん問題はないと思います。

【栂海新道起点 日本海へ下る階段】

【途中のトンネル】

【日本海へ】

【記念に撮っていただきました】
 タクシーで親不知観光ホテルに到着したら、まずは海抜0メートル、つまり海岸まで下って行きます。乗り合わせた2人は公共交通機関でここまで来ましたので、靴を履き替えるなどの準備をされていました。自分もとりあえず下に下るだけの準備をします。3人でホテル脇の階段を下って行きました。少し湿っていて部分的に滑りやすい箇所がありました。途中トンネルの脇を通って階段を下って行くと海岸に出ます。ここが海抜0メートルということになります。ここ数日は日本海側の天気は悪い予報になっていましたが、少し青空も見えているような状況で、素晴らしい眺めでした。お互いに写真を撮り合って戻って行きます。記念写真を撮り合うことができたのは良かったです。

 登山口付近で標高80メートルですから、それだけ登り返して行くことになります。やはりここまで来たら海抜0メートルには行っておきたいところですね。

【海岸へ下る階段】

【ウエストン像】
 階段を登ったら少しホテルの周りをぐるっとします。ウエストン像を撮ったり、日本海を見下ろしたりしていました。あまり時間的な余裕はないのですが、結構ここは3人とものんびりしていたように思います。ただ、今となってはそうそう訪れる機会のない場所ですので、むしろじっくり見て回っておいて良かったと思います。少し見て回った後は親不知観光ホテルに行って登山届を提出しました。するとホテルの御主人が私の登山計画書を見て、船窪小屋のお父さんお母さんによろしくとのことでした。後で船窪小屋に泊まって知ったことは、この方は娘さんの御主人だったのでした。いろいろなところに縁があるものだと思ったのでした。

 登山届まで提出をしたらいよいよ出発です。栂海新道は電波が入らなさそうでしたので、2日目の夜の夕食の予約を朝日小屋にしました。電話をするのに時間がかかりそうでしたので、2人の方とはそこでお別れをしたのでした。電話をすると、その日に白鳥小屋に着くのも難しいし、翌日にそこから朝日小屋に到着するのも厳しいというお話を受けましたが、とりあえず予約はさせていただきました。テントは張るつもりでしたので、遅くなる可能性が高いのなら自炊でいいのですが、朝日小屋は食事が有名でしたので、一度食べてみたかったというのがあります。ただし、今回は行程が厳しかったので無理して夕食の予約を入れなくても良かったなとは思いました。

【どこまでも広がる海】

【親不知観光ホテル】
 さて、いろいろと前置きが長くなりましたが、いよいよ出発です。既に10時は過ぎていて、白鳥小屋までCTで7時間ですので、順調に歩いても夕方5時頃になります。ザックを担ぐと、ザック自体は14キロ程ですが、ザックの容量に比して目一杯詰め込んでいましたので、なかなか安定しなかったですし、肩に食い込んで来て、ザックの重さの割には背負いにくかったです。ただ、慣れの問題のようで、数日後にはあまり気にならなくなっています。登山道は、最初からぬかるみが多く、急登に入ったところではかなり滑りやすいところもあって、なかなか先が思いやられるような滑り出しでした。それでも、とにかく登って行かなければ仕方がありませんので、ゆっくりでも登って行きます。

 途中何箇所か林道を横切るような場所があります。また、分岐などもありますが、基本的に横切って道なりに行くことになります。看板などもありますので、迷うようなところはないと思います。もしもの時にGPSは持っていたのですが、結局使うことはありませんでした。

【栂海新道登山口】

【林道を横切って】
 さすがに標高の低い所から登って行くうえに樹林帯で風が通りませんので、9月下旬とはいえ、歩いているとかなり暑かったです。山の上にしばらくいますからあまり汗はかきたくなかったのですが、最初から結構汗をかいてしまったのでした。それでも、夏場に比べれば全然歩きやすいでしょう。夏場は下りでないと、暑くてかなり厳しいように思います。

 しばらく登って行くと、お別れした2人の方のうち片方の方が前を歩いていましたので、しばらくお話をしてから先に行かせてもらうことにしました。もう1人の方は健脚で、その後に見かけることはありませんでした。やがて、小さな看板があるだけの入道山に到着です。下がぬかるんでいましたので、そのまま先を目指します。途中日本海が見える所があって、しばし海を眺めていたのでした。

【小さな看板があるだけの入道山】

【日本海の展望 下って来た時に見ると感動するかもしれません】 

【分岐には看板】

【尻高山】

【坂田峠】

【坂田峠を越える旧来の道でしょうか】

【タクシーならこの坂田峠まで入れるようです】
 途中で見えた日本海の眺めに感動しながら登って行くと尻高山に到着です。このあたりは標高が低くてほとんど展望がありません。ちなみに山と高原地図は尻高山までのCTが甘いようで、ここまではそれほどペースが速かったわけではないのに、結構タイムが縮まっていました。これは結構縮まるのかなと思ったのですが、この後は、それほど縮まらなかったように思います。

 尻高山から緩やかに下って行くと坂田峠に到着です。ここには、整備されていない旧来の道があって、歴史を感じました。整備されていないと言っても、それほど草の背丈は高くないので、もしかしたら定期的には整備されているのかもしれません。この旧来の峠から少し進むと舗装された道路が出てきます。タクシーなどでここまで入って来ることが出来るようで、実際ここまで入って栂海山荘に泊まっていた方もいたようです。確かに海抜0メートルから、親不知からということに拘らなければそのような選択肢もあるのでしょう。特に地元の方は当然途中から登るのでしょう。

【カタバミではなかったようです】

【オニシオガマ】

【ミヤマダイモンジソウ】
 その後少しずつ高度を上げて行くとシキ割りの水場が出てきます。ここで予定通り水を補給します。栂海新道には何箇所か水場がありますが、ここは登山道脇に水場があるので便利ですし、そうそう枯れることもないようでした。

 さらに登って行くと上部が開けている場所も出てきますが、徐々にガスの中に入っているようで、景色はほとんどありませんでした。ただし、この方が日に照らされて暑いよりはいいのかもしれません。

 水場を過ぎて、さらに登って行くと、建物が見えて白鳥小屋に到着です。小屋の裏手が白鳥山の山頂になっています。時間としては3時前ですので、ちょうどいい時間ではありますが、翌日の行程の長さを考えると、もう少し先までと考えたいところでした。

【シキ割りの水場】

【鮮やかなナナカマドの実】

【稜線はガスに覆われて来て】

【ミヤマママコナ】

【白鳥小屋】

【白鳥山山頂が小屋裏に】

【真っ白いキノコ】
 白鳥小屋に泊まった場合、翌日の朝日小屋までは14時間あります。夜明け前に出発したとしても、食事を取る場合に小屋に到着すべき夕方4時までに到着するのは厳しそうです。もちろん、この日も既に3時近くであることから、どちらの日に頑張るのが良いのかは難しいところですが、この日は時間は既に遅いものの、出発時間が遅かったことから、まだ体力的には何とかなりそうでした。したがって、暗くなるのは覚悟で先に進むことにしました。ちなみに、先行していたもう1人の方が栂海山荘を目指したらしいことがわかったことも、栂海山荘を目指すことにした理由の1つではあります。

 白鳥山からは、一旦急斜面を下って行きます。ガスが稜線に下りて来ていて、少し霧雨のようなものも降っていたので、雨になったら厳しいなと思っていたのですが、結局雨にまでならなかったのは助かりました。

【上部はガスに覆われて】

【ガスが流れて神秘的な森の眺め】

【アップダウンの末下駒ヶ岳】

【合間より見えた日本海 麓は天気がいいようです】

【菊石山 白鳥山よりもまだ標高は低いです】
 その後はアップダウンを繰り返してようやく下駒ヶ岳山頂に到着です。随分進んだように思ったのですが、思った程は進んでいなかったのでした。しかも、まだ白鳥山よりも標高が低いです。その後、下って登ると菊石山に到着しますが、ここもまだ白鳥山よりも低いです。この後の登り返しでようやく白鳥山の標高を超えてきます。ここに限らず栂海新道は、結構アップダウンが多くて、なかなか標高を稼げないのがしんどいところです。朝日岳までは標高差では約2400mですが、累積標高差は約3700mあって、これは下りでも1000m以上登る必要があるという計算になります。

 それでも、菊石山からは徐々に標高を稼いで行きます。黄連の水場分岐、黄連山を経て、一気に標高を稼いで行きます。このあたりは急登でしんどいうえに、ガスに覆われて徐々に暗くなって来ていましたので、心身ともになかなかきつい登りとなったのでした。当然時間が時間ですので、白鳥小屋以降は誰にも会っていません。

【見事なブナの森】

【黄連の水場分岐】

【黄連山】

【ガスガスの中で急登を登って行く】
 黙々と登って行くと、6時前に建物が見えて来てようやく栂海山荘に到着です。何とかすっかり暗くなる前に到着できて良かったです。小屋の中にスペースがなければ小屋前に広々としたスペースがありましたので、テントを張るつもりでしたが、中にスペースが確保できたので避難小屋泊にすることにしました。実際のところ、霧雨のような感じで足元が濡れていたので、テントを張るのはあまり気が進みませんでした。

 小屋の中は思ったよりも広かったのですが、泊まっている方も結構いたので、スペースは入り口付近に少しあいていただけでした。それでも空いていただけ良かったでしょうか。既にほとんどの方が就寝時間としていたようですので、静かに片付けや翌日の準備をして、入口近くにあった炊事場で夕食をとったのでした。ちょうど同じく自炊をしていた方といろいろ話をして過ごしました。

 小屋は協力金が2000円となっています。小屋内はそこそこの広さがあって快適です。トイレは外に開放感のあるトイレがありますので、暗い時間でないと使いにくいかもしれません。 

【ミヤマコゴメグサ】

【栂海山荘前スペース】

【栂海山荘】
 最後はなかなかきつい登りとなりましたが、やはり翌日以降の行程を考えるとこの日に頑張っておいて良かったと思います。結果的には翌日も目一杯歩いて、2日間で3日弱分の行程を歩けたのは、この縦走を振り返った中で、快調に歩き通せた要因の1つだったように思います。

 この日は前半のCT設定が甘かったので、思ったよりもCTを縮めて栂海山荘まで到着することが出来たようです。実は、これは翌日の朝日岳までにもその傾向がありました。やはり長丁場のルートですので、やや甘めに設定しているのでしょうか。

 初日から日が暮れるまでしっかり歩きましたので、床に入ったらすぐに寝てしまったようです。こうして、長い縦走の長い1日目が終わったのでした。この時点では、翌日は朝日小屋までと考えていましたので、2日目はある程度余裕を持って登れるかなと思っていたのでした。
 

【夜明け前の栂海山荘】
 2日目の朝を迎えます。この日は当初の予定では朝日小屋まででしたが、夕食のためにそれなりの時間には到着しなければなりません。したがって、前日も遅かったのですが、夜明け前に出発します。やはりここはルートが長いこともあって、夜明け前でも準備をしていたり、既に出発をしていたりする方は結構いました。歩いたことのないルートでしたのでどうしようか迷いましたが、結局暗い時間から歩き始めました。地形的に複雑ではないですし、基本的に道は明瞭と聞いていたのもあります。

 後でこの縦走を振り返ってみると、結局停滞した日を除けば全て暗い時間に出発しています。結果的には、長い距離を歩いてどんどん短縮できたのはこの出発時間の早さがあったのかもしれません。元々は、暗い時間の方が涼しいということで、夜明け前に出発することが多いのでした。緩やかな笹原の道を少し歩いて、登って行くと犬ヶ岳山頂に到着です。当然この時間では視界がありませんので、そのまま歩いて行きます。
 その後はちょっとザレた歩きにくい道もありますが、道そのものは明瞭ですので、特に問題なく進んで行きます。前日の白鳥山からしばらくそうであったように、このあたりもほとんど標高を稼ぐことなく、アップダウンが続いています。足元が明るくなって来た頃さわがに山に到着です。この栂海新道を整備されているのがさわがに山岳会とのことですので、こちらの山から名前を取ったのでしょうか。

 前日のガスに覆われた稜線よりは周囲の山々がよく見えていましたが、やはり稜線にはガスが多くて、主稜線はなかなか見えない状態でした。覆っている雲が薄くなって、雲が明るくはなるのですが、残念ながら夜明けの太陽を拝むことはできませんでした。さらに歩いて行くと黒岩山に到着です。このあたりはガスが晴れていれば、朝日岳へ続く斜面がよく見えていたのかもしれません。斜面が色付いて来て鮮やかになりつつありましたので、晴れた景色を見られなかったのは残念でしたが、それでもなかなか鮮やかでした。

【犬ヶ岳】

【さわがに山山頂】

【笹原の道】

【どこまでも続く尾根道】

【雲の多い主稜線】

【剱岳と毛勝三山でしょうか】

【雲に覆われて夜明けの太陽は見えず】

【緩やかなアップダウンが続く】

【池塘群】

【黒岩山へ】

【黒岩山頂上碑】
 黒岩山から少し緩やかに登って行くと黒岩平となります。このあたりは気持ちの良い草原や池塘群が広がっています。雪渓まで残っている箇所もありました。このあたりはテント泊をしてしまう方も多いのか、随所にテント禁止の看板がありました。なお、このあたりで水場のマークがあって、水を補給したかったのですが、結局それらしき場所を見つけることができませんでした。水は流れているのですが、湧いているように見える場所はなかったのでした。結局、水場で水を補給するのは、朝日岳を下ってしばらく歩いたところにある水場まで待つことになりました。

 黒岩平を過ぎると本格的な登りとなって来ます。とはいえ、急登という程ではなく、着実に標高を稼いで行く感じでしょうか。登るに連れて徐々にガスの中に入って行きます。この日も稜線はガスに覆われて景色はほとんどないかなと思いつつ進んで行きます。朝日岳までの道は初めてですし、そうそう歩く機会がないので、景色が見られなかったのは本当に残念でした。

【色付き始めた斜面】

【気持ちの良い草原が続く】

【白い花】

【夏場はお花畑だったことでしょう】

【チングルマの実】

【黒岩平】

【日が当たらなくても素晴らしい眺め】

【カラマツソウでしょうか】

【ヨツバシオガマ】

【水面に映るピークが美しく】

【押し寄せる雲】

【ガスの中に差し込む光】

【鮮やかな紅葉】

【黄葉が美しく】

【アヤメ平】

【紅葉を見上げて】

【雲海を抜けて】

【左のこじんまりとしたピークが長栂山】

【長栂山頂上碑】
 しばらくガスの中を歩いて行くと、突如ガスが晴れて来ます。雲海から抜け出たようで、先には見事な青空が広がっていました。目の前の坂を登って行くと、こじんまりとしたピークがあって、そこは長栂山でした。少し登山道から逸れるのですが、せっかくですので寄って少し休憩することにしました。

 山頂には朝日小屋から散歩に来た方がいて、しばしお話をしました。稜線は朝から晴れていたとのことでした。雲海が広がっていたので、その下にいる時にはガスに覆われているように見えたのでした。

 休憩をしたら朝日岳を目指します。長栂山で会った方が話されていたように紅葉が見事で、まだ染まり始めの場所も多かったですが、鮮やかな紅葉を見ることが出来ました。しばらく歩くと照葉池が出てきますが、池も周囲の紅葉も背後の白馬岳を始めとした山々の眺めも見事で、何枚も何枚も写真を撮りながら歩いていました。照葉池を抜けてしばらく歩くと吹上のコルに到着です。

【広々とした稜線】

【鮮やかな紅葉が広がって】

【長栂山方面を振り返って】

【見事な雲海と白馬岳方面の眺め】

【真っ赤に染まった木々】

【照葉池が美しく】

【照葉池と草紅葉】

【木道を歩いて】

【吹上のコルへ】
 吹上のコルは栂海新道への分岐であり、ある意味栂海新道の起点とも言える場所です。ここは蓮華温泉からの周回歩きで通っていますが、当時は、まさか栂海新道を歩くとは思いもよりませんでした。

 少し休憩しても良かったのですが、せっかくですので朝日岳まで登ってから長い休憩を取ることにしました。そのまま斜面を緩やかに登って行きます。振り返って長栂山方面の歩いて来た道を眺めるとなかなか見事でした。

 最後のやや急な斜面をひたすら高度を稼いで行くと、雪倉岳方面の道との分岐を経て朝日岳山頂に到着です。山頂の周囲にはハイマツ帯があって、景色を少し見にくいのですが、見事な景色が広がっていました。ただし、随分雲が増えて来ているようで、山によってはしっかりとは見られませんでした。

【右の吹上のコルを振り返る】

【蓮華温泉方面へ続く道】

【歩いて来た稜線】

【雪渓の残った場所も】

【クガイソウ】

【分岐】

【朝日岳山頂へ】

【剱岳と毛勝三山】

【白馬岳と旭岳】

【朝日岳頂上碑】
 朝日岳山頂に到着したのはまだ10時半前でしたので、さすがに白馬岳までの距離を考えて悩んだのですが、進める時に進んでおこうということで白馬岳を目指すことにしました。山頂にこの後朝日小屋に下ってテント泊をされる方がいましたので、心苦しくもキャンセルの言伝をお願いしたのでした。

 山頂で休憩をしたら、白馬岳に行くことを決めた以上、休憩もそこそこに白馬岳に出発です。実際、朝日岳までは順調に登って来ており、随分CTも縮めて来たのですが、やはり本来10時間以上の距離がありますので、体は思ったよりは疲れていました。緊急用の小屋ですので、最初からあてにしてはいけませんが、場合によっては雪倉岳避難小屋も頭の片隅に入れながら向かったのでした。実際、この後の水場では、場合によっては途中で泊まってもいいくらいの水を汲んでおきました。

【彩り始めた稜線と白馬岳】

【気持ちの良い下り道が続きます この後は鬱蒼とした樹林帯に入ります】

【残念ながらガスに覆われる主稜線】

【タテヤマウツボグサ】

【ミヤマトリカブト】

【水平道分岐】

【ミヤマアキノキリンソウ】

【鮮やかな紅葉】

【笹と紅葉のコントラスト】

【タテヤマリンドウ】

【チングルマの実】

【草紅葉が広がって】

【ハクサンフウロ】

【ニガナ】

【ウメバチソウでしょうか】
 朝日岳を下って行きます。朝日岳を下ったあたりから、少し雪倉岳に進んだ方向に地図上では2箇所水場があるようですので、それを探しながら下って行きます。下り始めの正面に見えていた白馬岳と旭岳が本当に見事で、しばし見とれていたくらいでした。しかし、その後はガスに覆われてしまいました。朝日岳を下って水平道との分岐に出たら、そのまま雪倉岳に向かって歩いて行きます。

 途中水を取れそうな場所があったのですが、ちょっと藪の奥にあったのでパスをして、もう1箇所を探します。探すと言っても、ここは2回歩いたことがあって、だいたいの目途はついていました。水場と言っても岩伝いに水が流れているだけですが、恐らくそれに間違いないでしょう。シキ割の水場以来水を補給していなかったので、重くなるのは辛いですが、ここでしっかり水の補給をすることにしました。水量は多くはないので、先に書いたように雪倉岳避難小屋に泊まるかもしれないことを考慮すると、水を補給するのに結構時間がかかります。

【mariさん rayさん ひっちさん との嬉しいばったりがありました】

【紅葉を眺めながらの歩き】

【尾根へ取り付くための登り】

【徐々にガスが晴れて】

【雪倉岳方面が見えて来ました】

【中腹は色付いて】

【タカネマツムシソウ】
 水を補給していると、雪倉岳側からやってくるグループがいます。水を補給している場所は狭いですので、道を譲るために少し動こうと思った時、先頭を歩いていたひっちさんと目が合ってお互いに大いに驚いたのでした。raymariさんと蓮華温泉からの周回ルートを歩いていて偶然ばったりしたのでした。2週間前の大菩薩嶺で御一緒して以来でした。いろいろと話は盛り上がりますが、お互いに目的地がありますので、名残惜しくもお別れとなりました。この日に朝日小屋に泊まっていたら、一緒に宴会ができたのでしょう。

 水の補給が終わったら雪倉岳を目指します。このあたりからは、あまりペースが上がらず、少しずつ少しずつ進んで行く感じでした。それでも、本格的な登りにさしかかったあたりから、ガスが一時的にせよ晴れて来てテンションは高まったのでした。こうして午後2時前にようやく雪倉岳に到着です。

【雪倉岳への最後の登り】

【雪倉岳山頂】

【雪倉岳頂上碑】

【雲に覆われる寸前の白馬岳】

【見事な雲海が広がる】

【雲が流れて】

【この時間は歩く人も少なくライチョウも伸び伸びと】

【草紅葉も鮮やかに】

【雪倉岳避難小屋】
 雪倉岳山頂からの景色は素晴らしかったのですが、それも僅かな時間で、すぐに白馬岳方面はガスに覆われてしまいました。少し休憩をしましたが、展望もなくなってしまったので、休憩もそこそこに先に進むことにしました。やはり、白馬岳への登り返しを考えると先は長いです。

 しばらく下って行くとライチョウに会うことができました。ガスが多かったのか、この時間はほとんど人が歩いていないからなのかライチョウの群れに会うことが出来て良かったです。

 その後さらに下って行くと雪倉岳避難小屋に到着です。時間的に白馬岳まで行くつもりでしたが、少し小屋を覗いてみると、また人が来たのかとかなり嫌そうな声をかけられたので、見てみると小屋の作業をしている人でした。昨日も満員だったとかで、この日はまだ4人のようでしたが、この後に白馬岳方面から下って来る方と結構すれ違ったので、結局この日も満員になったことでしょう。

【一瞬お花畑に見えた草紅葉】

【ウサギギク】

【笹原の間の紅葉】

【斜面の鮮やかな紅葉】

【紅葉のトラバースを振り返って】

【鉢ヶ岳を振り返る】

【鉱山道分岐 随分目印が増えたような気がします】

【上の方に稜線が見えて来て】

【ザレた道を右手に登って行く】

【三国境の分岐へ】

【三国境】
 避難小屋を過ぎるとしばらくなだらかなトラバース道が続きます。緩やかとはいえ、地味なアップダウンが結構疲れた身には応えます。とはいえ、最後の白馬岳までの登り返しを考えればまだまだでしょうか。鉢ヶ岳の脇を抜けて少し登って行くと鉱山道分岐があります。初めて通った時には随分地味だった覚えがありますが、誤って入る方がいるのか、ペンキが派手になっていました。

 その後は、ザレた道を登って行きます。小蓮華山からの稜線が近づいて来ると、一気に九十九折れに登って行きます。これをゆっくりゆっくり登って行くと三国境に到着です。まだ登りがありますのでしんどいところですが、ここまで来るともう一登りという感じでしょうか。振り返ると雲海に浮かぶ雪倉岳が見事でした。立山連峰方面も素晴らしい雲海が広がっていました。

【雲海に浮かぶ雪倉岳】

【雪倉岳をズームして】

【雲海が美しく】

【小蓮華山からの稜線】

【縦走路を振り返る 朝日岳はわずかに見えるのみ】

【山頂直下は草紅葉の美しい稜線に】

【賑わう白馬岳山頂へ】
 ここまでもこまめに休憩してきましたが、最後の長い休憩ということで三国境でも休憩を取りました。時間が時間ですので、もうあまり歩いている方はいないかなと思っていたのですが、小蓮華山の方からはまだ続々と登って来ていたのには驚きました。

 三国境からは、岩場交じりのやや険しい道を登って行きます。かなり疲れていましたので、岩場は少し慎重に登って行きます。ゆっくり登っていたものの、結局グループの方などに道を譲られてそれなりのペースで登って行きました。夕方の5時になってようやく白馬岳山頂に到着です。山頂は既に山荘にチェックインされた方なども登って来ているようで、結構賑わっていました。いつの間にかすっきりとした展望が広がっていたうえに、そろそろ日の入りの時間も近くて夕陽が見られそうでしたが、さすがにまだ宿が決まっていない状態ではどうしようもないので、少しだけ写真を撮ったら名残惜しくも白馬岳頂上山荘を目指しました。

【旭岳越しに沈み行く太陽】

【影白馬岳】

【雲海越しの立山連峰が素晴らしく 手前には丸山】

【白馬岳頂上碑】
 下って行くとやはり白馬山荘付近は大勢の人で賑わっていました。シルバーウイークの2日目のこの時間ですので、テントはとても無理だろうということで、この時は頂上山荘に素泊まりする予定でした。しかし、テント場に行ってみると、厳しいながらもスペースがあって、無事テントを張ることができました。梅雨明け後の海の日3連休で激混みを経験しているだけに、拍子抜けしてしまうくらいでした。こうしてテントを張ることはできましたが、時間が時間でしたので、夕陽は見られず、既に真っ暗になっていました。これだけ疲れていても夕陽を見に行きたいと思うくらいの景色だったと思います。

 本当は朝日小屋の予定だった2日目ですが、白馬岳まで足を伸ばすことで、3日目以降の予定が少し楽になったと思います。ただし、この日歩いたルートはCTにして17時間40分ということで、結果的にこの10日間で最も長い距離を歩いたことになります。さすがに疲れ切っていて、軽量化で防寒対策ができていないために夜は寒かったのですが、それでも明け方までは結構よく寝られたのではないかと思います。雲が多いながらも充実した2日目となりました。 

【素晴らしい景色を眺めながら頂上山荘へ】

【夕暮れの杓子岳と白馬鑓ヶ岳】
 


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